第36話 マインドチップ その2
「よしスクエ、心の準備は良いか?」
「い、痛くねぇんだよな……?」
そこには、スクエとノラが居て、何やら対面で向き合っていた。
「ふむ──まぁ……最初と言うのは何でも痛いものだ」
「変な意味にしか聞こえねぇーよ……」
軽蔑する様な視線をノラに送るスクエ。
「はは、まぁ気にするな痛いのは一瞬だ」
「はぁ……分かったよ……やってくれ」
強く目を閉じるスクエは、これから来るであろう痛みに耐える様に歯を食い縛る。
「行くぞ……」
ノラの手には真っ黒な小さいチップがあり、チップを中指と人差し指で挟むと、一気にスクエのこめかみに向かって突き刺す──そして一瞬で抜いた。
「──ッイッテーーーー!!」
スクエが大声を上げて、地面に転げ回る。
「ははは、大袈裟な」
地面を転げ回っているスクエの側で手に腰を当てて笑っているノラの姿がある。
それから暫くの間、スクエは転げ回っていたが、やっと痛みが収まって来たのか起き上がった。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇーよ! メチャクチャ痛かったぞ?!」
「ふむ、まぁその代わりシッカリとマインドチップはスクエの頭に埋め込まれたぞ」
ノラの言葉にスクエは自身の手でこめかみ辺りを摩る。
「──ッいて」
「はは、まだ傷口が塞がっていないんだから当たり前だ──暫くは触らない方がいい」
どうやら、先程の怪しいやり取りはノラがスクエにマインドチップを埋め込む時の会話だった様だ。
「これで、俺にも職業が開花されるのか……?」
なんだか実感が湧かないのかスクエは自身の手の平を見た後に手を握ったり、開いたりを数回繰り返す。
「どんな職業が開花されたかは分からんが何かしらの戦闘職なのは間違えた無いだろう」
「どうやって俺の職業を確認するんだ?」
「私が、マインドチップにアクセスして確認が取れる」
「なら、早く確認してくれよ!」
どうやら、ヒーローを目指しているスクエは力を手に入れる事が待ち遠しい様で、先程からニマニマしている。
「楽しみにしている所悪いが、今は出来ない」
「な、なんでだよ……?」
「私自身が壊れているから、アクセス出来ないんだ」
その言葉にスクエは改めてノラの全身を見るが、やはりあちこちが凹んだりしており、顔部分など半分は剥き出しの機械が出ていて、少しショッキングな映像となっている。
「そうか……ならどうする?」
スクエ自身も、ノラが今のままだと嫌なのかノラに問い掛ける。
「また、この山から一つ一つ部品を探すだけだな……」
そう言って、高く積み上げられた山々を見渡すノラとスクエ。
「はぁ……またこの広大な場所から小さい部品を探すのか……」
ノラを治すまでに一体どれ程歩き回ったか分からない程歩いたスクエはこのスクラップ場に相当詳しくなっていた。
「ふふ、まぁ一人では無いんだ──そんなに時間も掛からないだろう」
そう言って、早速部品探しをする様でノラは歩き出す。
「絶対時間掛かるだろ……」
そして、スクエも文句を言いつつもノラの後を追うように歩き出す。
ノラが大体の特徴を伝えて、スクエの記憶を辿りながら部品を探し回る。
発見すると、ノラがその場で自身に取り付けるを繰り返している内に徐々にだがノラの見た目も治っていく。
「そう言えば、一応既に何かしらの職業にはなってて、ただそれが何の職業なのか判断出来ない状態なんだよな?」
「あぁ、そうだ」
「職業についてあまり知らないんだが、そもそも職業を得ると、どうなるんだ?」
部品を探し回りながらノラに質問する。
「ふむ。その辺りも説明しとくか」
顎に手を添えて、何から話そうか考えながらノラは話始める。
「まず、職業を得れば単純にその職業の特性が手に入るな」
「特性?」
「あぁ──剣士なら剣の扱いが上手くなるし、斧使いなら斧が上手くなったりとかだな」
「おー、それはいいな」
スクエは自分が剣士になった姿を想像したのか、何も持ってないのに、あたかも剣を持っているかの様にノラに向かって斬りかかるポーズを取る。
「……なにしているんだ?」
「い、いや、何でもない……続けてくれ」
ノラの反応に恥ずかしくなり素に戻ったスクエはノラに先を施す。
「一体何個の職業があるかは分からないが、たまにとても珍しい職業を得る人間が出て来る」
ノラの言葉に、それは俺なんじゃね? って顔で頷くスクエ。
「まぁ、珍しい職業程強い傾向があるな」
「ノラ──ス、スキルとかあるのか?!」
ワクワクした様子でノラに聞くスクエに苦笑いしながらも頷く。
「あぁ。スキルもあるな──スキルも以前少し話したが、メンタルチップにインストールする事で使用する事が出来る」
「俺も絶対に欲しいぞ!?」
スクエの言葉にノラは多少申し訳無さそうにして話始める。
「悪いな……スキルも魔法程では無いにしろ、とても高価でな……以前スクエを買う為に大金を払ったから、今は基本の安いスキルしかインストール出来ないな」
「あはは、気にすんな! 俺はスキル使用が出来るだけ嬉しいぜ」
「よし、この件が落ち着いたら、何個かスキルをインストールしてやろう」
ノラの言葉にスクエは飛び跳ねる様に喜ぶ。
それからスクエ達は周りが真っ暗になりよく見えなくなるまで探し回り、大分ノラの部品を見つけられた様だった……
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