第23話 スラム街からスクラップ場へ
「はぁはぁ──アイツらは……追ってきて無いか?」
ロメイとグロックにワザと姿を見せて子供を助けたスクエは、事前に確認していた逃走ルートを利用して上手く逃げ切れた様だ。
「ふぅ……ここはスラム街より住み辛そうだな……」
スクエの目の前にはジャンク部品などが高く積み重なっていた。
それも何個もそういうジャンク品の山が多くある場所があり、いつ崩れて来るか分からない。
「スラム街の次はスクラップ場か……」
ここは、以前──ノラに案内して貰ったスクラップ場であり、ノラからは壊れたリプレスやイナメイトが捨てられる場所と説明された。
「もしかしたら、ノラもここの何処かに捨てられているかもな……」
自身の呟いた言葉に少し落ち込んだらスクエは、取り敢えず寝床を確保する為に歩き出す。
「はは、スラム街と違って誰もいねぇーから好きな所選び放題だぜ!」
カラ元気なのだろう──スクエは無理やり明るい声を出して周囲を探る。
「うーん、すげぇーゴチャゴチャしているし、たまにリプレスの頭が落ちていて気味が悪いな……」
スクエの言う通り周りにはリプレスの残骸とも言える頭、手、足などが散らばっており、見た目が人間と区別が付かない為、本物かと見間違う程であった。
「取り敢えず、直ぐに見つからなそうな場所を寝床にしないとな」
高く積み上げられたジャンク部品の山がある為視界は常に山で遮られているが、スクラップ場自体は、とても広大である。
そして、暫く歩き回っていると、どうやら納得する場所を見つけた様だ。
「うん──ここは良い隠れ家になりそうだな」
屋外の為、雨風が凌げそうな場所を探し回ったが見つからなかった様だが、その代わり周りが多少開けた場所を見つける。
ここであれば、確かに周りにあるジャンク部品が積み上げられた山が崩れたとしても巻き込まれる事は無さそうだ。
「後は、雨風を凌ぐ為にどうするかな?」
何か良い手が無いか考えていると、いきなり大きな音が鳴った。
「──?!」
スクエはまたロメイ達が来たと思い慌てて周囲を見渡す。
そして、暫くの間その場で音が収まるのを待ち何が起きたのか確認する。
すると、どうやらジャンク部品の山が崩れた音であった様だ。
「アイツらで無くて良かったけど危ねぇーな」
その後も雨風を凌ぐ為の寝床をどうするか考えた結果──スクエが出した答えは……
「よし、作るか──無いなら作る!」
そう言って、スクエは立ち上がりジャンク部品の山を見回す。
「お? アレ使えそうだな」
何やらトタン板みたいな物をジャンクの山から見つけたスクエは小石を拾いジャンク部品が高く積み上げられて出来た山に向かって投げる。
すると、その衝撃で次々と山が崩れてトタン板がスクエの足元まで転がって来た。
「うん──これを何枚か集めて屋根にするか」
先程と同じ容量でトタン板を何枚か集めたスクエは次に畳一畳分くらいの大きな鉄板を二枚運んでいる。
「重い……」
スクエは横着して二枚同時に持ちながら敷布団代わりにするつもりなのか、寝床にしようと決めた場所に運ぶ。
「ふぅ……」
そして、スクエが寝床に選んだ場所は広大なスクラップ場の中心から少し離れた場所であった。
「ここはジャンク部品の山も低いから周りを見渡し易いし丁度いいな」
スクエは運んで来た部品を地面に置いて何やら組み立て始めた。
「作るって言っても大した事出来ねぇーよな」
取り敢えず、地面の上に鉄板二枚を置いたスクエ──敷布団代わりなのだろう。
「問題はどうやって、このトタン板を屋根として固定するかだよな……」
何か接着性の物があるわけでも無いのでスクエはしょうがなくドラム缶みたいな物を二つ並べて、その上にトタン板を置いた。
「よし、これで直射日光や雨が当たる事は無いな」
スクエが作り上げた寝床は地面に二枚の鉄板を敷き、その四隅にドラム缶を置き更に日差しや雨を防ぐ為にトタン板をドラム缶の上に置いた。
「入ってみるか……」
試しに鉄板に寝転がって見るスクエ。
「うん──カプセルホテルくらいの天井の高さだが寝れなくも無いか」
起き上がるとドラム缶の上に載せたトタン板に頭がぶつかってしまうが、寝る以外に使用しない為、気にしない様だ。
「後は飛ばされない様にトタン板に重りでも乗せとくかな」
リプレスのかイナメイトのか分からない部品をトタン板の上に置き重石として使用する。
「完成ー! なんだかんだ良いんじゃ無いのか?」
その家とは到底呼べないものが完成した事に自画自賛して喜ぶスクエ。
「ま、まぁ──これから徐々に快適にして行こう……」
達成感に包み込まれていたスクエだが冷静になってから見てみるとやはり、それは家で無かった事に気がつく。
「次は水と食料の確保だな!」
人間──水と食料が無ければ生きてはいけない。
「まぁ──ここら辺に水がある訳もないか……」
スクエはそこら辺に転がっている部品を利用して水を汲める物を探した後にリプレスに見付からない様、慎重に水と食料を手に入れて直ぐにスクラップ場に戻って来る。
「これから、毎回この緊張感を感じながら食料調達しないとダメなのかよ……」
スクエは汲んで来た水を飲み、一息入れる。
「うん──取り敢えず今日中に寝床と水が確保出来て良かったな」
スクエが空を見上げると、既に太陽は完全に沈み、今では月明かりだけどなっている。
「静かだ……」
目を瞑り音を拾おうとするが、辺りには人もロボットも居ない為、とても静かである。
たまに何かが転がる音だったり山が崩れたりしてスクエを驚かすが──それ以外は特段大きな問題はない様だ。
「今日は疲れたし寝るか……」
リプレス達との二度目の鬼ごっこに疲れ果てたスクエは直ぐに眠りに落ちる。
そして、これまで嫌な事があった筈のスクエであったが、当の本人は何故か笑っている。
恐らく久しぶりに自分の力で子供を助けられた事が嬉しいのであろう……
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