第22話 二人組のリプレス
スクエがスラム街に来てから早くも一週間が経過した。
満足にご飯なども食べられない状況は続いているもの、人間は適応する生き物の為、スクエ自身もこのスラム街生活に慣れて来た様だ。
「──なんだ?」
いつも通り太陽が昇るくらいに目が覚めたスクエは何やらガヤガヤしている事に気が付く。
「何かあったのか……?」
こんな早い時間から騒がしい事に疑問を持ったスクエは様子を見に行く。
そして、人集りが出来ていたので何かあったのか聞く為、声を掛ける。
「なんかあったのか?」
「あぁ、なんかリプレスがスラム街に入って来たらしいぞ」
「──ッ!?」
スクエの身体が一瞬にして強張るのが分かる。
「ど、どんかリプレスだ?」
「さぁ──でも二人組らしい」
──アイツらだ……
「な、なんでこんな所まで?」
スクエは逃げ様とするが、どうやら遅かった様だ。
周りの人間がリプレスを敬う様に膝を着き顔を伏せる。
それはまるで自分が何かの拍子に標的にならない様にと出来る限り縮こまる様に……
──クソ、ど、どうする!?
この場で一人だけ立っているのも目立つ為、慌ててスクエも膝を地面に付けて顔を伏せる。
すると、ゆっくりと二人のリプレスが歩いて来るのが分かる。
──や、やっぱりアイツらだ
スクエは盗み見る様に視線だけを動かす。
二人組はノラをスクラップにしたグロックとロメイであった。
「おい、ロメイ──本当に此処にいるのかよ?」
体格の良いグロックが跪く人間達を見回す様に歩く。
「は、はい──人間が一人で生きていくとしたら此処しか無いです」
グロックの横には背は小さく小太りのロメイが付き従う様に歩く。
「ハッ──それにしても虫みたいにウジャウジャいやがるな」
まるで虫を見る様にグロックは人間を見ている。
「虫とは、また良い表現ですね」
「何人か暇つぶしに潰しとくか?」
「あ! ──それいいですね!」
うっとしそうに人間を見ていたグロックとは逆で、とても嬉しそうな表情をするロメイ。
その言葉に跪いている人間達は自分が標的にならない様にと更に縮こまる。
──や、やっぱりコイツら狂ってる……最低の奴らだ……
スクエが近くにいる事など梅雨とも知らずグロックがすれ違い様に人間達を蹴る。
「オラ!」
グロックの蹴りを食らった人間は人間三原則により抵抗出来ない為、せめて死なない様に人体の急所である頭などを必死に手で隠す。
「オラ──いてぇーか?」
「お辞め下さい……」
「なら教えろ、ここに最近来た黒髪の少年を知らねぇーか?」
「し、知りません──ここには毎日の様に新参者が来るので」
「それでも黒髪なんてそうそういねぇーだろ?」
「わ、私は知らないです……」
「ッチ、使えねぇーな!」
グロックは人間をひと蹴りすると次に横で跪いている方にも問い掛けていた。
──頭に布を巻いていて良かった……
スクエは競売の際に黒髪が珍しい事を思い出した為、事前に布で頭を隠して、この一週間を過ごしていた。
そして、スクエはもう一人のロメイの様子を見る。
ロメイもグロック同様人間達を痛めつけていた──しかも絶対的弱者である、人間にはとても強気で接している様だ。
「おい、黒髪の少年は見なかったか?」
「し、知りません」
「あっそ──ならこうだ!」
ニヤリと笑ったロメイは人間を1発殴り地面に倒れたのを確認して笑いながら蹴る。
「あはは──お前ら黒髪の少年を知らねぇーか? 隠していたら俺とグロックさんが殺すぞ?」
グロックとロメイの姿に怯える人間達。
そして、ロメイが次に標的にしたのは……
「おい、ボウズお前何歳だ?」
「じゅ、十歳です」
その言葉を聞きロメイが口角が上がった。
「そうか、そうか」
ロメイが怖いのか子供は震える。
──こ、子供には流石に手を出さねぇーよな……?
スクエはグロックロメイの様子を伺う。
そして子供に近づくとロメイは笑う。
「ボウズ、黒髪の少年を見なかったか?」
「み、見ていません……」
「そうか、そうか──見てないならしょうがねぇーよな、お仕置き決定ー」
「ひぃ……」
ロメイは相手が子供だろうが関係無いのか腕を大きく上げた。
そんな様子を見ていたスクエは……
──た、助けねぇーと!
しかし、身体は動かない。
「悪く思わないでくれよ? ボウズがいけないんだからな?」
「や、やめて下さい」
これからロメイに何をされるのか分かるのか子供は涙目になり震える。
周りの大人達はリプレスに逆らう事が出来ない為、ただひたすら目の前の光景を見る事しか出来ない。
──た、助ける!
スクエは無意識に腕輪を触る。
──俺は出来る、俺は出来る!
そして、スクエは立ち上がり走り出す……リプレス達がいる方向とは逆に……
「「あん?」」
グロックとロメイはいきなり立ち上がって走り出した人間に目がいく。
「あ?! ──おい、ロメイあいつ!」
「は、はい!」
「追いかけるぞ!」
グロックがスクエを追い掛ける為に走り出し、ロメイも走り出す。
そして、子供は殴られずに済んだ事に安心して泣き始める。
周りに居た大人達が直ぐに集まり子供を慰めていた。
──よ、よかった……
その様子を走りながらも確認したスクエは前を向いて全力で足を動かす。
──後は逃げ切るだけ!
「ロメイ! ──あの野郎を逃すなよ」
「は、はい!」
リプレスの二人はとんでもない速さでスクエを追い掛けるが、中々追いつけ無い。
それは、この入り組んだ迷路の様なスラム街をスクエは事前に何があった時の為にと──この一週間で逃走ルートを確保していたからだ。
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