第15話 原初のリプレスとは
荒んだ目をした男は先程まで蹴り続けた人間から一度離れてノラの方に向き直る。
「俺に何か様か?」
男の声にノラは目を瞑りながら頭を左右に振りながら話す。
「特に用は無かったんだが、お前のその行為が不愉快だからな──辞める様に言いに来ただけだ」
ノラはスクエに向けていた優しい微笑みとはまるで逆で、真っ赤に燃える様な瞳を吊り上げて鋭い眼光を男に向けると、男は急に態度を変える。
「あ、赤目!?」
何やら慌てた様な表情をした後に直ぐに態度を変える。
「へへ、これは申し訳ありませんでした。コイツが粗相していたので叱っていた所なんですよ」
男は急に媚びた笑みをノラに向けて、腰を少し折り曲げて少しでも抵抗する意思が無い事を示す。
「おい、今日はもう良い帰るぞ」
ノラの前だからなのか男は手で軽く小突く様に奴隷の頭を叩く。
「はい……ロメイ様」
先程まで男に蹴り続けられた奴隷が起き上がる。
真っ白な服は泥やゴミなどがへばり付いていた。
「では、私はこの辺で帰らせて頂きます、失礼しましたー」
逃げる様にスタスタ歩いていく男の後ろを店員が追い掛ける。
スクエとノラの間をすり抜ける際にノラにお礼をする様に頭を下げると早々とリプレスを追い掛けて行った。
「スクエ、大丈夫だったか?」
「あ、あぁ……今のどうなっているんだ?」
何故、あのリプレスはノラを見て急に態度を変えたのか不思議に思うスクエにノラは説明する。
「まぁ、リプレスにも色々あってな」
「色々?」
「あぁ、製造する際に珍しい部品を使ったり、造り手が有名だったりで色々変わってくるんだよ」
先程のリプレスに向けた鋭い表情は無くなり再び優しい笑顔でスクエに説明するノラ。
「それで何故かは分からないが造り終わり電源を入れ込むと目に色が現れる──大体の量産型は青色だが、他の色だと何か特別な部品や造り手が有名だったりする証だな」
「他の部品を使用すると何かが変わって来るのか?」
スクエの質問にノラが少し考える仕草をする。
「そうだな……良い部品を使用すればその分処理速度が上がるな」
「処理速度上がってなんか意味あるのかよ?」
「ふむ。まぁ、基本良い部品を使用した方が戦闘力が高いという認識でな、先程のリプレスも恐らく喧嘩しても私に負けると思って逃げたんだろう」
ノラは少し誇らしげな表情をする。
「ノラはさっきの奴と戦闘になったら勝てるのか?」
「まぁ、ノーマルのリプレスになら一対一では負けないと思うぞ?」
──確かに、俺を殴った時ノラはとんでも無く早いスピードで重い一撃だったもんな……
殴られた時の記憶を思い出しているスクエに向かってノラが呟く。
「それじゃ、帰るか」
ノラとスクエは家に帰る為歩を進める。
「私は諦めんぞ?」
何を? と聞く必要も無い言葉にスクエはノラの言葉を無視して話題を変える。
「リプレスは全員奴隷を所持しているものなのか?」
「あぁ。何かしらの理由が無い限りは所持しているな」
「理由?」
「例えば、先程の様な奴らは自分で奴隷を殺してしまったりするから次の奴隷を見つけるまでの期間は所持していない状態とかはあるな」
──確かに、あのまま何もし無かったら、あの店員は殺されていたかもしれない
「他は、単純にお金が無いリプレスだな」
「金が無い?」
「あぁ、別に一切働かなくても不自由無くリプレスの場合は暮らしていけるからな──働かない奴らも中にはいる」
ノラの横を歩きながらスクエは話に耳を傾ける。
「働かなくても暮らしてはいけるが、ノーブルメタルやイナメイト、奴隷を買う事が出来ないから幸せかと言えばまた別だな──まぁ奴隷の場合は一日働けば直ぐに買えたりする」
──奴隷ってどれくらい安いんだよ……
「だが、そういう奴らは奴隷を買ったとしてもご飯などを賄える金が無いから結局は餓死させてしまうけどな」
ノラの言葉にスクエは心の奥でまたチクリと痛みを感じる。
ノラから人間達の現状を聞けば聞く程酷い扱いを受けているのを実感してしまう。
「なぁ……なんで、そもそも人間はリプレスの奴隷になったんだ?」
スクエの言葉にノラの表情が少し険しくなる。
「それは私にも分からない……いつから人間がリプレスに奴隷として扱われていたか知っているのは恐らく国王であるアバエフ様くらいだろう」
「王様は知っているのか?」
「あぁ、アバエフ様は原初のリプレスと言われているからな」
ノラの言葉に首を傾げる。
「原初?」
「あぁ、この世界が誕生して初めてのリプレスだ──そして原初のリプレスはアバエフ様合わせて全部で四人いらっしゃる」
「四人もか」
スクエの言葉に頷くノラ。
「その四人がそれぞれ納めている国があり、その一つがこの国であるアクアスだな」
「そういう事か、ノラが俺にここの世界は四つの国しか無いって言ってたのは原初のリプレスが納めている国の事か?」
「おー、スクエ──今日は冴えているな?」
スクエの理解力に少し驚く様な仕草で目を見開くが、恐らく演技でありスクエを揶揄っているのだろう。
「う、うるせぇ! 俺でもそれくらい分かるわ!」
「はは、それは悪かった」
どうやら、家を出る前の微妙な空気感は既に無くなり二人は楽しそうに家に帰っていく。
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