第3話 奴隷に身体を洗われる
スクエの競売が終わったと言うのに未だに盛り上がりを見せ、会場内は叫び声や拍手などが入り混じっており鳴り止む気配は無い。
スクエは会場の様子に気を取られている暇では無いと気付き脱出を試みるが──そんな事を許す老紳士では無い様だ。
「おい、早く牢屋に入れ」
あまりにも高値が付いたからなのかスクエを力尽くで戻さず、言葉を持って牢屋に入る様に施す。
「うるせぇ、ジジィ! いいから此処から出せ!」
「な、なんて奴だ!? ──コイツどこか欠陥でもあるのか……?」
老紳士は命令を聞かないスクエを見て目を丸くする。
「こんなに高値で売れたんだ、バレたら不味い」
そう言うと、先程同様にスクエの腕を掴んで無理矢理牢屋に入れた。
「い、痛ぇーよ!」
「大人しく、牢屋に入っていろ」
客席からは見えない様にスクエを力尽くで牢屋に入れた老紳士は指を鳴らす。すると来た時と同じで自動で牢屋がステージ裏に移動する。
──クソ、結局また牢屋に入れられちまった……
諦めの悪いスクエはそれでもどうにかしようと牢屋の格子を揺らしたり蹴ったり──または、大声で助けを呼んだりと出来る事は全て実行するが逃げ出せそうに無い様だ。
悔しそうにしているとステージの方ではまた盛り上がる声が響き渡った。どうやら、二つ目のメインを出す様だ。
こうして、競売はどんどんと進み気が付いたら全て終了していた。
奴隷達は買い取った主人達に会う前に一度身体を綺麗にする為、開い空間に移された。
「いやだ……いやだ……」
スクエの牢屋の隣では同じく牢屋に入れられている女性が裸で体操座りをして足に顔を埋めてブツブツと呟く。
「あ、あんなキモい奴の奴隷になるくらいなら──死んだ方がマシ……」
女性の口からは次々と不穏な言葉が発せられる為、スクエは気になってしょうがない様だ。
「な、なぁ──アンタ大丈夫か?」
あまりにも不憫に見えたのでスクエは声を掛けるが、女性は一切反応を示さなかった。
そしてひたすら、自身の殻に篭るようにブツブツと独り言を呟く。
声を掛けても無駄と思いスクエは周囲を見渡す。
「一体ココはどこなんだよ──ココに来てからあのジジィとしか話してないぜ?」
状況を整理する為かスクエも独り言の様に気が付いた事などを話す。
「俺がこんな場所に連れて来られた理由も分からないし、どうやって連れて来られたのかも不明だ」
スクエは腕を組み、目を瞑って考えてみる。
「確か……二人の中年の喧嘩を止めようと思って……電車に轢かれそうになった所までは覚えているんだよな……」
どうやら、その後からは一切覚えていない様であり、気が付いたらこの牢屋の中に居た様だ。
独り言で状況を整理していると前の方で声が聞こえた。
「それでは、全員で一斉に洗って下さい。ですが一番高値の付いた小僧だけは丁寧にお願いしますよ?」
声の方を見てみるとそこには先程競売で司会役をしていた老紳士の姿が見える。
そしてその傍には真っ白い服を着ている者達が数人、老紳士の話を聞いていた。
「では、始めて下さい。もし商品に傷なんて付けたら分かっていますね……?」
老紳士が少し威圧する様に声のトーンを落として話すと、何人かが手足を震わせていた。
──アイツらはここの職員かなんかか?
老紳士達のやりとりを見ていると、全身白い服を着ている者達が掃除用具を持ち移動をし始めた。
全身白い服装を着た者達は各牢屋に近付き、ホースの様な物で牢屋内に居る奴隷達に水をぶち撒いている様子が見える。
──おいおい、洗い方雑だな……
そして、スクエが居る牢屋にも一人の人間が近付いて来て、ホースの先端を向けたかと思うと勢い良くスクエに水をぶっかける。
「つ、つめてぇ!」
周りの様子を見て水だとはわかっていた様だが、実際に浴びてみると結構冷たくてスクエは驚く。
「な、なぁアンタ……ここから俺を出してくれ。俺は被害者で何も悪い事なんてしてねぇーんだよ!」
スクエの必死の叫びも虚しくホースを持った男は首だけを左右に振るだけであった。
その後も何度も牢屋から出させて欲しいとお願いしたり、ここが何処なのかと必死に話しかけ続けたが最初の反応以外は一切反応せず黙々とスクエを洗う作業に没頭している様子であった。
そして気が付いた時にはスクエだけでは無く他の牢屋内にいる奴隷の全員が小綺麗になった。
「よし、後は服を配ってあげなさい」
老紳士の指示により牢屋内に全身真っ白な服が投げ込まれた。
「なんだ? こんな真っ白い服を着るのかよ……」
全裸だった為投げ込まれて直ぐに服を広げてみるが、何も模様などが付いていない無地の白シャツと白いズボンであった。
こんなダセェー服着たくねぇーけど──流石に全裸はまずいよな……
スクエは渋々と言った感じで服を着る。
「これはダセェ……」
首を曲げて自身の爪先から胸まで何度も見返してしまう。
「無いよりマシ、無いよりはマシ」
念仏の如し呟き続ける様子はまるで自己暗示だ。
他の牢屋の者達の様子を確認するが、スクエと同じく嫌々ながら着ている。
「無いよりはマシだよな……」
自身に自己暗示を掛けたのが良かったのか、スクエはなんとか心を落ち着かさせた。
「さてさて、奴隷達は綺麗になりましたし、お客様達に引き渡しに行きますかな」
老紳士は指を一度鳴らすと自動で牢屋が動き出す。一体何処に向かっているか不明だが老紳士の歩く姿は軽やかであった。
そして、スクエ達が入っている牢屋がピタリと止まった──その先には今回競売で奴隷達を買った者達が居た
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