第八十四話 絆の力<後編>
すべての音が聞こえなくなる。
衝撃の圧力が波動となって広がっていく。
魔方陣に印された五角の星形から垂直方向へ光が飛翔すると同時に、大地に刻まれた二対の勾玉・陰陽太極図も呼応する。
魔方陣が四方の
体中を荒ぶる龍神が駆け巡り、凄まじい霊力が私の中に装填された。
--これが、真の
左胸の五芒星が私の意志を奮い立たせるかのように黄金の輝きを放つ。
「
「一緒に行こう!!」
双子のお二人も
「我々も一緒に参ります!!!」
昴様が前方の巨大な鬼神と倒れ込む
凪様は地に伏しながらも何かに抗うかのように苦しみに耐えている。
「玄武!!朱雀!!青龍!!お前たちは白丸と黒丸と一緒にオロチに向かえ!!!」
式神たちが
「昴様!!!私たちは凪様のもとへ!!!」
私と昴様を乗せた白虎が力強く地を蹴り、凪様のところへ疾走していく。
私は振り落とされないように白虎の背をしっかりと掴んだ。
式神たちが総力戦でオロチに立ち向かう。
青龍様の凄まじい諸刃の突風がオロチの鋼鉄の巨体を斬りつけて、間髪入れずに振り回した鋭い尾の一撃を喰らわせ、体勢を崩した鬼神の懐を目掛けて玄武様の水竜巻が激しい水流と共に追い討ちをかける。
オロチの剛腕が青龍様の胴を鷲掴みにすると、大きく振り被ってそのまま大地に叩きつけた。再び振り上げようとしたオロチの腕を目掛けて玄武様が体当たりを仕掛け、黒光りする
朱雀様が炎の両翼を激しく羽撃かせ、灼熱の烈火が鬼の巨体を猛火に包む。けれど、オロチが手に持つ図太い鎖を振り回すと、鎖の先についた鉄球が低い風切音とともに回転速度を上げていき、強烈な遠心力のかかった鉄球が朱雀様を叩き落とした。朱雀様が堪らず咆哮する。
完全体となったオロチの攻撃に応戦する双子のお二人の姿が視界に入る。けれど、人間の比にならない鬼神の剛腕と振り回される鉄球から繰り出される攻撃は凄まじい破壊力をもって次々に大地を削る。白丸様も黒丸様も
--このままでは白丸様たちも式神たちもオロチに殺されてしまう!!!
疾走する白虎の背に掴まりながら前方に凪様が倒れているのを確認した私は心を決める。
「昴様!!私一人で凪様のところへ向かいます!!」
後ろから私を抱える昴様が首を横に振った。
「ダメだ!凪は今、正気じゃないんだ!!一人で行ったらどうなるかわからない!!!」
私は昴様の瞳を真っ直ぐに見た。
「このままでは白丸様たちが危険です!!私が凪様を取り戻します!!!」
「だけど———」
「私を信じてください!!私は皆様を信じています!凪様のことも信じています!凪様は私を傷つけるような人ではありません!!」
昴様が一瞬沈黙をする。
眼前には倒れる凪様、その先にはオロチに猛威を叩きつけられる双子のお二人と式神達が映る。
「わかった!!俺も桜ちゃんと凪を信じる!!!」
私たちを背に乗せて白虎が激走する。
前方では凪様が倒れている。
「昴様!私はこのまま凪様のもとへ飛び込みます!!」
昴様が私の体を一度強く抱いた。「生きて」と昴様が囁く。
私はその力強い腕の中に身を委ね、ほんの一時の間目を閉じた。
熱く脈打つ昴様の鼓動が背中から伝わってくる。
私は前を向いて頷き、疾走する神獣の背中から目まぐるしく迫る凪様の姿を確認すると白虎の背に片足をかけた。
突如、目の前に大きな岩が落下する。オロチの叩きつけた鉄球によって削られた大地が次々に吹き飛んでくる。白虎は巨大な飛来物を躱しながら疾走を続け、目の前の巨石を駆け上って大きく跳び越えた。眼下に凪様の姿が見える。
私は白い神獣の背を蹴って思い切り飛んだ—————
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