第七十六話 光の記憶<前編>

次の瞬間、太極図となった八咫鏡やたのかがみが天頂へ凄まじい光の柱を放出した。

聖なる光の柱が矢と変わり、新月を目掛けて飛翔する。

光の矢が命中すると同時に、新月が神聖な輝きをまとっていく。

そのまわりでは数億の星たちが祝福するかのように美しくきらめく。

私は信じられない光景に目を奪われた。


「月が・・、まるで太陽のように自ら輝いている・・。」


すると、無数の星々が猛烈な速さで移動を始めた。

それはまるで点が線で繋がっていくように、箒星ほうきぼしの引く美しい尾のように、星たちの光が天空を埋め尽くしていく。


「こんなことが!!?星たちが移動していく・・!!!」


天の星々は互いをぶつけ合って玉突きのように目まぐるしく動き続けている。

火花が散るように、流れるように、意志を持つかのように星たちが移動する。

私の左胸のあざが熱量を増していく。

そして、最後のきらめきが数億の星の塊に吸い込まれていくと、一つの形が浮かび上がった。


「!!!!!」


私たちの真上に、巨大な五芒星ごぼうせいが現れる。

その中心では聖なる光をまとった新月が神々しく輝いている。


天から力強い声が降りてくる。





『新月と五芒星ごぼうせいもとに生まれた我が魂よ。』





否応なく、私の体が声の主に親和性を感じる。





「この声は・・、黄竜こうりゅう様・・・???」





『我、太陽神より召喚され、今、ここになんじの力となるべく降臨せん。』





黄竜こうりゅう様が言葉を続ける。





なんじまことの心を持つならば、我の力を授けよう・・。汝、それが偽りの心ならば、我の力に死するのみ・・。汝、自らを信ずる強い意志はあるのか?』





私の左胸に光の熱量がみなぎる。





「はい!!!私は自分のまことの心に誓います!!私はこの争いを終わらせたいのです!!この世界の誰の命も失いたくない!!!!!」





私の左胸の五芒星ごぼうせいが熱くなり、光の波動を放った。

衝撃波で隣にいたすばる様が吹き飛ばされる。


「昴様!!!」


黄竜こうりゅう様の強い光が昴様を優しく受け止める。





『・・よかろう。されば、我、その心の真偽を、今ここで問う!!!』





何かが動き出す予感と共に、どこからともなく雷鼓らいことどろきはじめる。

聖なる光をまとった新月がまぶしく輝く。

黄竜こうりゅう様が力強い言葉を続ける。





『汝、日の神、太陽神の加護を受けし聖者とともに、今ここに巣食う災禍を討ち果たせ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』





刹那せつな、かつてない巨大な雷鳴がとどろくと、天空の新月から黄金に輝く光の返し矢が解き放たれる。





迫る巨大な光の矢が神龍の姿となっていく。





大地に突き刺さる黄金の龍。





衝突と共に鳴り響く爆音。





解き放たれる力。





黄竜こうりゅう様が私の体をつらぬいた。






「あああぁあぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!」






私の体はあまりの衝撃で大地に押し付けられる。

凄まじい気の流れが熱量となって体中を駆け巡る。

私の中の荒ぶる力が解放される。


おうちゃん!!!」


昴様の声が聞こえた。

視界が一気に白くなる。


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