第五十八話 自燈明、道を開く<後編>
数刻の後、まだ夜も明けぬ内から身支度をはじめる。
私たちの準備が整い、塚の前までやってくる。
青龍塚の岩石は、宝石のように水色と白の
青龍様が岩石に手をかざす。
他の塚と同じように地鳴りが響き揺れが起こる。
そして、地底からより一層大きな金属音が響くと揺れが収まっていった。
青龍塚が砕け落ちる。
「これで青龍塚を
青龍様が困ったように肩をすくめた。
すると、
「わかった。俺たちはこのまま玄武のところへ行く。・・青龍、一緒に戦おうな。」
青龍様が小さな腕をぎゅっとまわして抱きつく。
「うん!昴さんたちも気をつけて!!桜ちゃんも!!」
「青龍様もですよ。」
「うん・・。」
甘えん坊の青龍様が私の側に来ておねだりをするので優しく抱きしめる。
青龍様は離れたくないと言わんばわりにぎゅっと抱きついてくる。
--青龍様は不安な気持ちを
私は精一杯の愛情でその小さな体を包んであげようとした。
すると、
「
私たちは夜道の中を玄武塚へ向かって馬を走らせた。
昴様が地図を持って先頭を走る。
その両側で双子のお二人が
やがて、湖の北端へ差し掛かると山に囲まれるようになってくる。
「地図によると、ここから湖に向かって小さい半島状の地形になっていて、その先端の
昴様が一度馬を止めて地図を確認した。
そして、考えを巡らせるかのように話を続ける。
「・・玄武の爺さんが何かを知っているはずだ。そして、恐らくその先に・・。」
「
やがて、山道に入り玄武塚を目指す。
夜明けが近くなり、東の空が薄らと明るくなってきた。
けれど、湖の上に立ち込める黒い雲で光がすぐに
遠くの雲間に朝焼けが垣間見え、星が最後の光を輝かせていた。
突然、昴様が馬を止めた。
馬が
「道が・・。」
前方を見ると視界が開けていて、そこから先は下り坂になっている。
眼下の湖は嵐のように荒れ狂っていて、時折強い風が頬を打った。
玄武塚へ続く道は、今まで通ってきた山道よりもはるかに狭い
「ここから先は下り坂だし、斜面の傾斜がきつい。それに道が細すぎる。これじゃあ、馬でも進めないね・・。歩いて行ったほうがいい。」
全員が馬を降りる。
玄武塚へ
凪様がその先の湖を
「行くしかないな。」
岩の多い
時々、昴様が私に手を差し伸べて、凪様が体を支えてくれた。
双子のお二人が邪魔な石や枝を取り払う。
私は慣れない山道を懸命に下って玄武塚を目指した。
「ここか。」
やがて、私たちは玄武塚に到着した。
上空を黒くて分厚い雲が
湖の中心からどす黒い炎が立ち込めて広い範囲を延焼させていた。
炎の周りでの猛烈な流れが起きて荒波を岸に打ち付けている。
すると、どこからともなく
「玄武の爺さんか?!」
「ふぉふぉ、ここじゃよ。」
煮えた湖から濃い水蒸気が漂ってくる。
目を凝らすと塚のすぐそばに琵琶を抱えた玄武様が現れた。
「よくぞここまで参られた。昴殿、凪殿、桜姫殿、それと・・、双子の白丸殿、黒丸殿。」
玄武様が「ふぉふぉ」と笑うと小虎がナアナアと鳴いた。
「おお、白虎もおったな、ふぉふぉ。・・それでは、玄武塚を解錠しようかの。」
玄武塚には黒い岩石が置かれていて、先の
玄武様が塚に置かれた岩石に手をかざす。
地鳴りが響き、それとともに地底から金属音が鳴り響く。
やがて、揺れが収まり玄武塚が
「これで湖のすべての
「
「そうじゃ、
私は玄武様に問いかける。
「玄武様・・、島へ渡った後はどのようにすれば
「ふむ、行ってみればわかる・・。ふぉふぉ。」
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