第五十四話 黄金の五芒星<後編>
「
「桜!!無事か!!!」
「・・私は大丈夫です。皆様はご無事ですか?」
「うん、みんな大丈夫だよ。」
昴様が
私は立ち上がると皆様と一緒に
「朱雀!!」
昴様が走り寄る。
「昴ちゃん・・、ごめんね。
白虎にもたれた色っぽい女性が答えた。
女性は肩が大きく開いた
「
朱雀様は傷だらけだった。
「朱雀・・、お前、怪我をしているじゃないか!桜ちゃん!」
「はい!」
昴様と私は朱雀様の手当てをはじめる。
「昴ちゃんだって怪我をしているじゃない・・。もう、いつもそうなんだから・・。あなたが優しくしてくれるから・・、昔の私は勘違いしちゃったのよ。」
朱雀様は瞳を
昴様が治療する手を動かしながら、私に薬の混合濃度を指南する。
私は言われた通りに複数の薬を調合する。
私たちは手早く傷の手当てを進めていく。
「これで良し・・。終わったよ、朱雀。」
「・・二人ともありがとう。」
昴様が私に向き直る。
「俺は凪たちの手当てに行ってくるね。桜ちゃんはここで休んでて。」
「でも・・。」
「大丈夫。桜ちゃんもさっきの戦いで呪力を使ったんだから少し体を休めないとダメだよ。」
「・・わかりました。昴様、ありがとうございます。」
昴様は凪様たちのところへ走って行った。
私はその後ろ姿を見送ってから視線を戻すと、朱雀様が私の髪に優しく触れた。
「あなたが桜ちゃんね・・。
朱雀様が微笑む。
「母様のことをご存知なのですか?」
「うふふ。ご存知も何も、椿さんは私の恋敵だったんだもの・・。」
「コイガタキ・・?」
私がその言葉の意味を探していると、朱雀様が優しく語り出す。
「うふふ。私ね、昔、人間に恋をしたの。・・昴ちゃんに。」
朱雀様が色っぽく微笑む。
私は目の前の
「でも、私がいくら押し掛けてもダメだったの。だって、昴ちゃんは椿さん一筋で彼女をずっと追いかけていたから・・。ほんとに・・、どんなに頑張っても全然振り向いてもらえなかったわ。」
朱雀様は少し寂しそうに視線を落とす。
「だけど、ある時わかったの・・。『恋』って私の気持ちだけで成立するけれど、それだけじゃダメなんだって・・。」
「それだけじゃダメ?」
少し間をあけてから朱雀様が話を続ける。
「それ以上先に進むためには相手の気持ちも必要なのよ。片方が想っているだけじゃダメ。両方向で想い合わなくちゃ先に進めないってね・・。」
朱雀様が視線をあげて私に微笑む。
「お互いが想い合うから『愛』になるのよ。」
「・・愛。」
「人間に恋をして愛を知ったわ。そして気持ちがすごく楽になった・・。だから、私は昴ちゃんを
朱雀様が再び寂しそうな顔をするので、私はその手に自分の手を重ねる。
すると、朱雀様が私の手を握り返してくれた。
「・・ありがとう、優しい子ね。」
朱雀様が話を続ける。
「昴ちゃんと椿さんは愛し合っているの。・・それは今もずっとそうよ。昴ちゃんの心の中には椿さんがいる。そして、桜ちゃんも同じくらいとても愛されているのよ。」
小虎が私の膝の上に乗る。
「桜ちゃんは、昴ちゃんのことを愛している?」
私は迷わず
「愛しています。昴様は私の大切な人ですから。」
「うふふ。昴ちゃんは幸せ者ね。」
私も笑顔で返す。
すると、朱雀様がふいに問いかける。
「・・桜ちゃんは、恋はしているの?」
私は朱雀様の質問に戸惑って少し
「・・・素直で可愛い人。椿さんのように心まで美しいわ。」
朱雀様が私の頬に手を添えて微笑んだ。
「
全員の手当てが終わると朱雀様が塚の方へ歩き出した。
私たちもついて行く。
朱雀様が塚に向かって手をかざすと柔らかい波動が当てられる。
すると、そこに置かれた岩石が共鳴をはじめる。
やがて、岩石が光を放ち出すと、それと同時に共鳴音が大きくなっていく。
徐々に湧き起こった地動が大きな揺れに変わっていく。
大きい揺れがしばらく続くと地鳴りとともにガシャンという金属音が響いた。
今度は徐々に揺れが収まっていく。
そして、朱雀塚が粉々に
「これでいいわ。」
朱雀様が私たちのほうを振り向く。
「私はこのまま南を守るわ。火球落下の騒ぎを聞きつけた良からぬ
朱雀様は「それに」と言って話を続ける。
「
「謝らなくていいよ。」
昴様が言うと朱雀様が顔を横に振って話を続ける。
「そいつらが昴ちゃんたちの足止めになってしまうかもしれないから、私はここに残る。あなたたちはこのまま
すると、凪様が問いかける。
「朱雀は一人で大丈夫なのか?
「あら、可愛いことを言うわね。私のことを心配してくれるの?ありがとう。・・でも大丈夫よ。南を守るのは朱雀。昴ちゃんたちのために私は自分の役目を果たすわ!」
昴様が口を開く。
「・・わかった。朱雀、お前も気を付けろよ。」
「昴ちゃんもね。」
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