第四十九話 鴛鴦の襖<付録>
寺の
夜も深くなり、寝静まる時刻となる。
隣の部屋を仕切る
桜と昴はまだ起きているようだった。
凪は目を閉じる。
やがて、隣の部屋から話し声が聞こえてくる。
「・・ぁ、ちょっと・・・、昴様やめてください・・。」
「桜ちゃん・・、ほら、・・大人しくしてて・・。」
「ぅん・・ぁ・・・、もう・・、ちょっと、・・ダメだから・・。」
--なっ!?
凪が勢いよく起き上がる。
双子もつられて起き上がる。
一体、隣で何が起きているのか三人は困惑する。
「ダメじゃないでしょ?」
「ぁあ・・、だから・・・、ダメ、待って・・。」
「待てない。」
--何なんだ!!桜は一体、何をされているんだ!!
凪が意を決して
「・・もう!お薬は自分で
「だって、背中にも塗らなきゃいけないでしょ?自分では手が届かないよ?ちゃんと塗らなきゃ早くよくならない!桜ちゃんの体に
--は?薬??
「自分でできます!」
「俺は桜ちゃんのために
「大丈夫ですから!!」
どうやら二人は取っ組み合いをしている様子だ。
--だ、大丈夫なのか?!
「もう、言っても聞いてくれないのなら!」
--・・どうするんだ?
「あっ!桜ちゃん、何で背を向けるの?」
「・・・。」
「え・・?もしかして怒った・・?ご、ごめん!謝るから!」
「・・・。」
「ごめん!・・ちょっと、桜ちゃん??本当にごめんってば!でも俺は本気で桜ちゃんの体が心配なんだよ!ねえ、わかってよー!」
昴の謝る声が続き、しばらくすると笑い声が聞こえる。
「・・ふふ。」
「あれ?」
「ふふふ。」
「あ!ちょっとー、今のわざとなの?」
「だって・・、ふふ。」
「もう!俺は本気で心配してるんだよ!・・・ふふ。」
桜と昴が笑う。
「・・ふふ。わかりました。手が届かない背中だけお願いします。それ以外は自分でやりますから。」
「うん、わかった!なるべく早く終わらせるようにするからね!」
「ふふ、ありがとうございます。」
--話が丸く収まったのか?・・え?背中!?
凪は頭を抱えてその場に倒れ込む。
白丸と黒丸が小声で言う。
「若様・・、敵将はかなりの強敵のようですね・・。しかも相当な溺愛っぷり・・・。」
「・・ああ、そのようだ。」
「それに、桜姫が背中を見せるとは・・。桜姫は伯父上をとても信頼されていますね。」
「・・・。」
「若様にとって、伯父上を説得するのが一番の難関になるかもしれません・・。激戦になるのが目に見える・・。」
「・・・何のことだ。」
「あ、いや・・、それに関しては我々の援護もお役に立てないかと・・。」
「だから、何の援護だよ・・。」
双子が苦笑し、凪が
桜と昴の会話が続く。
「ふふ、くすぐったい。」
「もう、桜ちゃん動かないでね。」
「ふふ。」
「ちょ、ちょっと・・、ん?ここがくすぐったいの?」
「・・ぁ・・、そこはダメ・・、自分でやります・・。ふふ。」
「ん?あ、ごめん。でも、ついでだから・・、ね。」
かくして、凪の眠れない夜が更けていく。
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