第四十七話 一隅を照らす此れ則ち国宝なり<中編>
私たちはお寺のすぐ近くにある
私のまわりにも、書物で勉強したり
「これと、これ・・、それにこれも!」
私は夢中で薬草を集めた。
上を見上げると、真っ直ぐに伸びた杉の枝の間から
林の中はひんやりと
そして、
「
「はい。」
すると、今度は凪様が私の薬草を入れる
「これは俺が持つよ。」
「凪様、ありがとうございます。」
「桜姫、そちらは
双子のお二人が私の両手をとる。
「ふふ、これでは薬草を
私たちは笑う。
その後、十分な量の薬草を集めると、部屋に戻り皆様と一緒に薬の調合を行った。
そして、昼過ぎになり、私たちはお寺の総本堂に向かう。
朱色の柱に白土の壁、
建物の正面には本紫色の
私たちは本堂の中へ進む。
中には黄金色に輝く
「昴様、ようこそおいでくださいました。」
和尚様が昴様に一礼する。
「こちらこそ、昨夜は深夜にもかかわらず私たちを迎え入れていただき誠にありがとうございます。」
昴様が
小虎は私の膝の上で眠っている。
「いえいえ、旅の方々を迎え入れるのは常のこと。お礼には及びません。それに、昨夜は
「玄武の爺さんが・・?」
昴様が聞き返す。
「
和尚様がゆっくりと
「おお、失礼・・、『一隅を照らす、此れ
和尚様の後ろにある三つの
すると、和尚様が
凪様が口を開く。
「俺はそんな大それたものではありません。俺は自分の大切な人たちを守るため、そして国のために戦うと決めただけです。」
すると和尚様が
「それが凪様の
和尚様の言葉を聞いた私たちは自然と三つの
灯火がゆらゆらと優しく揺れる。
「・・ところで、玄武の爺さんがここに現れた理由は何かあるのでしょうか?」
昴様が和尚様に問いかける。
「理由までは教えていただけませんでした・・。玄武様はただ『待っている』とだけおっしゃったのです。」
「待っている?」
「そうです。玄武様は特別に認めた方にしかお会いになりません。それに、向こうから会いにきてくださることはあっても、こちらからは中々お会いすることはできません。玄武様にお会いするには、
和尚様が続ける。
「それぞれの塚には方位神、つまり四神獣が
「和尚様は塚の位置をご存知なのですか?」
昴様が尋ねると和尚様が顔を横に振って古い地図を渡す。
「ここに玄武様がお渡しくださいました地図がございます。こちらをお持ちください。お役に立ちましょう・・。」
昴様が地図を受け取ると、和尚様が双子のお二人に向き直る。
「それにしても興味深いのは白丸様と黒丸様です。お二人は容姿がそっくりなようで正反対、おそらく性格も正反対でしょう。ですがお二人は一つの
双子のお二人が顔を見合わせ
「我々の魂が一つ・・。」
すると、昴様が続ける。
「そう、二人はまるで陰と陽のように・・。
昴様が双子のお二人に微笑むと和尚様も同意する。
「本当に不思議なものです・・。」
「・・おっと、お話が過ぎてしまったようで申し訳ありません。出発なさるのであれば明日の朝がよろしいでしょう。
私は和尚様にお礼を申し上げる。
「私こそ、桜姫様には薬を調合していただいた。薬は貴重なものです。感謝いたします。」
そして、私たちは本堂を後にした。
凪様と双子のお二人は剣術の
境内はとても広く、隅々まで綺麗に掃除がされていた。
私たちはすれ違う僧たちに挨拶をしながら進んでいく。
杉木立を挟みながら大きな宮造りの建物が見える。
私と昴様はそれぞれの建物を見上げながら、寺の西側の敷地へと山道を歩く。
昴様は私の手を取ってゆっくりと歩いてくれた。
私もその優しい
やがて、昴様が小さい
「・・ここに寄っておこうと思って。」
昴様の言葉がどこか切なく響く。
「
「・・・母様。」
私と昴様は御堂の前で一緒に手を合わせた。
小虎が足元で大人しく座っている。
木々の向こう、敷地のどこかで
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