第四十〇話 大蛇の復活<四>

すばる憂流迦ウルカを振り払う。


「そんな力を手に入れて何になる!!いずれにしろ朝廷はもう終わりだ!!!朝廷を動かす公家の権力は飽和状態で各地の守護たちがしびれを切らしている。先の戦がその証拠だ。いずれ武家が公家にって代わる!!」


「だから昴は武家についたということか?」


「・・どちらでもない。なぜなら俺は陰陽師おんみょうじだからだ。陰陽師は均衡を司る者。陰と陽は対であり常に変化するもの。すなわち、振り子のように常にどちらにも動くもの、釣り合うものだからだ!・・お前にわかるか?」


昴が憂流迦ウルカにらみつける。


「何だと・・?僕に説教する気か!?」


「俺とお前は釣り合わないということだ!!!」


怒りをあらわにした昴が叫んだ。

再び金属のぶつかり合う音が響き、再び刀で押し合いながらにらみ合う。


憂流迦ウルカ・・・、お前は己の私欲のためにまつりごとむさぼろうとした挙句・・、大蛇オロチを復活させて椿を殺した!俺は犠牲にされた妻と娘のためにも、お前を絶対に許さない!!!」


昴が怒りの斬撃ざんげきを振り下ろす。

凄まじい金属音が鳴り響き、憂流迦ウルカの刀が受け止めた。


「だけど言ったよね!僕は恐怖と破壊ですべてをぶっ壊す!もう朝廷も何もかも関係ないんだよ!皆殺しだ!!・・そう、僕は昴も殺すつもりだよ。そして、その美しい魂を喰らってしゃぶり尽くしてやるよ!昴のすべてが僕のものだ!!」


二人のすぐ近くに斬られた大蛇オロチの巨大な頭が飛んでくる。

蛇の頭が大地に激突する轟音ごうおんが響く。

大蛇オロチ見遣みやった憂流迦ウルカが再び昴に視線を戻した。


「・・それにしても、あの娘は小賢こざかしい真似をしてくれた!大蛇オロチを封印して腐らせるなんて僕にも予想外だったよ。ほんとにどこまでも・・、あの女と血を分けた娘も呪い殺したいくらい憎たらしいっ!!!」


憂流迦ウルカがギリギリと歯軋はぎしりをする。


「だけど、あの娘は昴の血も分けている。そしてムカつくことに中々の上玉だ。・・僕は女もいけるんだよ。だから、一回くらいなら手篭てごめにしてやってもいい。そうしたら、あの娘は一体どんな声で泣き叫--」


刹那せつな、昴の刀が横一文字に一閃いっせんした。


「俺の娘にけがれた言葉を使うな!!!」


「ぎゃっ」と奇声を上げた憂流迦ウルカが地面に倒れ込む。

憂流迦ウルカの口は横一線にかれ、黒い血がしたたり落ちた。


憂流迦ウルカ・・、俺はお前と決着をつける!!!」


昴が刀を振り上げた。

しかし、次の一瞬だった。

憂流迦ウルカの髪が無数の蛇に変わる。


「!!」


大量の蛇が昴の首を締め上げていく。


「うぁぁぁあ・・・」


「・・殺されるのはそっちだよ。」


憂流迦ウルカけた口先から不気味な笑いがれる。


「・・だけど、昴が命乞いをするなら特別に免罪符を与えてやってもいい!僕の愛を認めろよ!!」


「うぅぁあ・・、く、そが・・・!!」

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