第二十八話 勝敗のゆくえ

双六すごろく大会は二対二の熱戦となっていた。


「よーし!次の一戦で決勝だよ!!」


すばるには負けないからな!!」


すると、黒丸が割って入る。


「若様も叔父上も今日はここまでです!」


「なんだよ黒丸!あと一戦して俺たちは昴に勝つんだ!」


なぎの後に昴も続ける。


「なーにー、黒丸?戦いに水を刺すの?まったくもって無粋だねぇ。」


「そういうわけではありません!確かに双六遊びは楽しいのですが・・。」


黒丸が凪のほうへ向き直る。


「若様、我々にはまだ仕事が残っているではありませんか!明日の出発までにやらなくてはならないことが山積みなんですよ!それに兄上も!」


黒丸がものすごい剣幕で凪と兄に迫るので、二人が観念した。


「わ、わかったよ・・。もうやめる・・。」


結局、勝負は二対二の引き分けに終わった。

仕事を放って遊びに熱中するさまごうを煮やした黒丸が雷を落としたのだ。


「あーあ、これじゃあおうちゃんからの『あーん。』がもらえないじゃないか!」


昴が残念そうに饅頭まんじゅうを食べながら溜息ためいきをつく。


「ふふ、それでしたら昴様と凪様がお互いに『あーん。』をすればよいのではないですか?お二人ともでしょう?」


桜が悪戯いたずらっぽく笑うと昴が首を振る。


「そんなの嫌だよ!桜ちゃんから『あーん。』してもらえるから意味のある権利なんじゃないか!何で凪と・・。」


凪も続ける。


「俺もそれは嫌だよ!桜がそういうこと言うなんて・・。双六の強さといい・・、意外だよ。」


すると、白丸と黒丸が「ぽん」と手を打つ。


「それは名案ですね!さすが桜姫!」


「そうですね。名案です。今回の双六は引き分けということでお互いに饅頭を食べさせあって幕引きしましょう。若様と叔父上は日頃から仲が良いのですから、それくらい容易たやすいでしょう?」


「え・・。」


凪と昴の顔が引きつるのも気にせず、二人の手に饅頭が渡された。


「さあさあ!では桜姫、和睦わぼくの号令をお願い致します。」


双子が凪と昴を向かい合わせにする。


「ちょっと待てよ!」


「あー!やめてやめて!!」


桜はおかしくて笑いをこらえられないといった風に袖口そでぐちを口に添えている。


「ふふ、白丸様も黒丸様もおもしろいですね。では、お二人とも・・・、『あーん。』」


凪と昴が顔を引きつらせてお互いを見る。


「・・桜のためだからな!」


「俺だって桜ちゃんのためなんだからね!」


二人が同時に饅頭をお互いの口元に運ぶと・・


「ぐぉ!」


「むご!」


二人は同時にお互いの口の中へ饅頭を突っ込んだ。


「はひふふんはよふはる!(何するんだよ昴!)」


「ほひひーはほ!(美味しいだろ!)」


昴が饅頭をもぐもぐと頬張ると、すぐに大笑いを始めた。

つられて凪も笑い出す。


「あーおかしい!やっぱり双六って面白いねえ!」


「双六は面白いよ!」


双子と桜も笑顔で饅頭を食べる。


「あ!この饅頭は美味しい!今まで食べたことのない味だ。」


白丸の後に黒丸も感心したように続ける。


「そうですね!それにこの砂糖菓子の飾りも洒落しゃれていて・・すごくいい!」


「ふふ、本当に。見た目も味もどちらもお菓子職人さんのこだわりを感じますね。それに甘くて本当に美味しい。」


すると、小虎が桜の膝の上に乗ってナアナアと饅頭をねだった。


「ふふ、小虎も食べたいの?」


桜が饅頭を小さくちぎって小虎の口元に運ぶ。


「はい、小虎。『あーん。』」


小虎は「ぱくっ」と饅頭を口に入れると美味しそうに食べた。


「ふふ、皆様と美味しいものを食べるのは楽しいですね。」


桜が微笑むとまわりも笑顔になる。

みんなで饅頭を食べて茶を飲みながら会話が弾む。

やがて、楽しい茶会はお開きとなった。

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