第十七話 隠された姫君<後編>

「俺は桜ちゃんの体に大蛇オロチが封印されていることを秘密にするために、桜ちゃんを結界の中に隠した。誰かがそれを知れば、桜ちゃんの命が危ないと思ったからね。」


そこまで言うと昴様が口をつぐむ。


大蛇オロチを桜の体に封印・・って、それ本気で言ってるのかよ?」


なぎ様が私の顔をのぞき込みながら、にわかには信じ難い様子で昴様に問い返す。


「本気だよ。大蛇オロチは桜ちゃんの中に封印された。だけど、大蛇オロチは桜ちゃんの命を削りながらを待っている。」


、って何だ?」


今度は凪様が昴様の目を真っ直ぐに見据えて言う。


「ここから先は桜ちゃんも知らないことなんだけど・・。」


ちらりと昴様が私に視線を落としてすぐに凪様たちに向き直った。


というのは、八岐大蛇ヤマタノオロチが復活する時だよ。」



--えっ・・・?



「昴様、何を・・。」



--封印された大蛇オロチは私の命が尽きる時、私を道連れにして消滅するはずなんじゃ・・。



昴様が私の髪を撫でる。


「・・ごめんね。これから話すことを桜ちゃんが知ると絶対辛くなると思って・・。だから本当のことをずっと言えなかったんだ。俺もこの話をするのはものすごく辛い。胸糞むなくそがめちゃくちゃ悪い。だけど本当のことを話す。」


私は全身の血の気が引いていくのを感じた。


「本当のことって、私の知らないことって・・」


昴様は私の気持ちを察して、優しく体を引き寄せてくれた。


「桜ちゃん、あの『封印のしゅ』にはがあるんだ。多分、俺の書庫かどこかでその呪を目にしたのを覚えていて、あの時はそうしたんだろうけど・・。」


--つづき?


「・・・はい、だけど・・そのつづき?」


「その続き・・、陰陽道の禁忌きんきの術『封印の呪』はその呪を使うだけでは終わらないんだ。『封印の呪』を仕上げるためには『』が必要になる。桜ちゃんは、あの時、を使ったね?」


--鎮めの呪・・?そんなの、知らない・・。


私は震えながらうなずく。


「桜ちゃんは『鎮めの呪』を使わずに『封印の呪』だけを使った。だから今の桜ちゃんの『封印の呪』はなんだ。その不完全の中でアイツは桜ちゃんの命を削りながら、虎視淡々と復活の時を待っている。」


体の表面が不自然に冷えていく。


「そんなっ、・・大蛇オロチが復活したら昴様はどうなってしまうのですか?」


震える体を必死に起こしながら問い返すと、私を支える昴様の手に力が入った。


「桜ちゃん、俺はあの日から自分の命に誓ったんだよ。桜ちゃんは絶対に死なせない。俺は今度こそ大蛇オロチを倒して、必ず桜ちゃんを助けるって!」

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