第六話 白丸黒丸<前編>
凪は
視察では様々な収穫があった。
実際に報告された内容に相違ない例もあれば、不正によって
--館に戻って親父に報告すれば何人かの地頭は処分されるだろう。
不正を行った地頭によって
人々の営みは
--これから仕事も増えるだろう。だが民の繁栄のためにも新たな
凪は館へ馬を急ぎ走らせる。
--帰ったら
『お待ちしています。』
そう
頬を桜色に染めていじらしく
--参ったな。あんな顔をされるなんて・・。
凪は首を振ると馬の
やがて開けた
陽は傾きかけているがここを抜ければ館はすぐだ。
凪は馬を止めて側近たちの方へ振り向く。
「館まで後少しだ!疲れた者がいればしばし休む、そうでなければこのまま行く!」
「はっ!このまま館へ!」
凪は手綱を
そんな凪の背を見ながら側近の一人が話しかけた。
「若様、何だか最近はご機嫌が宜しいですね。何か良いことでも?」
側近の一人が凪の方へ馬を寄せる。
「白丸、無駄話か?館が近いからといって油断するなよ。」
「はいはい。相変わらず真面目ですね。でも、最近の若様は
凪とは割と打ち解けて話す白丸という男は含んだ笑みを見せる。
「ん?何のことだ?」
「いやー、だって、最近の若様は仕事を
白丸がさらに馬を寄せる。
「何だか休憩を絶対に取ってやるんだっていう
凪はどきりとした。
「お前、俺がどこへ行くのかわざわざ見張っていたのか?」
「嫌だな、そんな悪趣味なことはしないですよ。それに後を付けたって若様だったらこっちの気配でわかっちゃうでしょ?」
そう言うと白丸は片目を
「でも我々は嬉しいんですよ?戦に行けば先陣を切って敵に突っ込んで行く戦いの化身みたいな若様にやっと女でもできたんじゃないかってね。だって、戦と仕事以外にやることないんじゃないかってくらい女っ気なかったから・・。」
凪は黙る。
すると、もう一人の側近が白丸を
「兄上!若様にそのような口振りをするなんて失礼だよ。若様、私の兄が非礼を致しました。この黒丸が双子の兄に代わってお詫び申し上げます。」
白丸の後ろからすっと馬を寄せた男が胸に手を当てて深く一礼する。
「黒丸、俺だけ悪者にするのはやめろよな。お前だって少しは興味があるだろ?」
「私は何も言ってないですよ。兄上と一緒にしないでください。」
黒丸はきっぱりと断って双子の兄をふんと
白丸は睨む弟の視線も気にせず凪に向かって話を続ける。
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