第11話

 こうして、今に至る説明は、全て終わった。

 三人への違和感。彼らの奇怪な接触。午後の都市伝説の遭遇。未知の能力が伴う疾走。それら夢のような現象の全てが現実であり、紛れもない運命の導きであると確信するには、目の前の三人の存在は十分過ぎた。

 残るはただ一つ、語部百を囲む都市伝説の三名が、どうして彼を知っているのかという現状への疑問だけであった。


「クラスでただ一人――オレ達の存在に気づいていた、語部百、クン?」


 笑顔のターボに、百は至極当然の質問をした。


「……どうして、僕のことを?」


「そりゃあ、オレ達にとって君が必要だからさ。とりあえず、事情を説明するのも兼ねて、オレ達の説明からした方がいいかな、どうかな?」


 百が頷いた。


「まあ、説明するのはオレじゃないんだけどさ。リカ、タブレットを出して、本部に繋げて。こういう説明は姉さんの方が慣れてるだろうし、あっちに説明してもらうよ」


「タブレットなんか使うの?」


「もちろん。スマートフォンだって使うんだ、タブレットだって使うし、なんならドローンだって興味あるんだぜ……ありがと、リカ」


 ターボが話しながら、リカが通学鞄から取り出したタブレット端末を受け取った。

 百の目から見ても、大して目立った特徴のないタブレット。人の目に映らない、認識されない都市伝説がどうやってタブレットを手に入れたのか気になったが、百はあえて追求せず、彼らの話に身を委ねることにした。


「それじゃ、テレビ通話をするとしようか」


「テレビ通話? 誰に?」


「ちょっと厄介だけど、必要な相手さ」


 けらけらとターボが笑っていると、タブレットの画面にメッセージがポップアップされて出てきた。通話相手は、『都市伝説課』とだけある。


『ビデオ通話アプリを起動します』


 音声案内で、通話アプリが起動して、そのまま連絡を始めた。

 いつもの百なら、都市伝説がタブレットを有効活用しているなんて馬鹿げた話は、ドラマか映画の中だけだろうと一笑に付していただろうが、今なら何だって信じられる。

 超高速で走る少年とてけてけ、三本足のリカちゃんを名乗る少女がいるのだ、黒い目の子供でも信じられる。

 ターボはと言うと、やや気怠そうな態度になっていた。仮に、話したくない相手とこれから話さなければならない時ならば、人間はきっとこんなリアクションを見せるだろう。

 通話先に発信する画面を見つつ、ターボは話す。


「そうそう、あんまり余計なこと話そうとしたら切ってもいいから。本当にあの人はおしゃべりでさ、まったく、二十四時間喋ってないと死ぬのかね、うちの姉さんは。とてもじゃないけど、落ち着いたオレと縁のある都市伝説とは思えないよね」


「アンタにそっくりだよ、ターボ」


「ん? どしたの?」


「何でもない。ほら、通話が繋がったみたいだけど」


 てけの嫌味に首を傾げつつ、ターボがタブレットの先の相手に話しかけた。


「あ、ほんとだ。もしもし、姉さん?」


 ターボが声をかけた途端。


『はーいっ、語部百クン、初めましてーっ! 私がそこにいるポンコツ都市伝説のお姉さん、Hカップグラマラス超美人都市伝説のターボお姉さんでーっす!』

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