ⅩⅢ 路地裏 上

暗い路地に二人の足音が響く。





一人は2mはある身長にちぢれた黒髪の男、一人は猫背気味の黒い袋を背に抱えた男。



猫背の方はもう一人に比べると些か若く見えた。




二人に共通するのは、爛々と光る赤い瞳と、生臭い鮮血のにおいを纏っていることだった。




無言の空間の中。

黒髪の男は無表情に歩を進めていたが、猫背の男は彼から何らかの感情を読み取ったようだった。




そして察した上で、あえてお構い無しと言わんばかりに口を利いた。





「あの子、旦那のこと悪魔ディアボロって呼んでるんスか?お似合いッスね」




クク、と態とらしく喉を鳴らして見せる。




黒髪の男は眉を顰めただけで、正面を見て歩みを止めない。





「旦那が悪魔なら、小悪魔サライってとこスかねぇ」




猫背の男は気だるげに袋を反対の肩に抱え直しながら、黒髪の男に話しかける。


そのほとんどは独り言と化していたが。





いや、旦那がオンナ買うなんて珍しーなとは思ったンスよ。



でも実際はなんも知らない一般人の女を連れ込んで殺すでもなく家に置いてたなんて、ねえ?



それこそ天変地異が起きたんじゃないかって思ったッス。




ま、オレの知り合いにも一般の人間と家庭を持った輩はいたからその辺についてはなんも言わねッスけど






男は二、三歩前に出て、その赤い目で黒髪の男を見据えた。






「でもね、」






黒髪の男は、その懐から取り出された物を見た瞬間表情を変えた。

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