第7話 空腹

      【藤代くん視点】

 「ぐぅー」


 ん? 今なんか音、鳴らなかった?

 もしかして白井さん?

 まぁ、確かにもうすぐ昼になるけど。


 まさか学校一の美少女のお腹が鳴るなんて思いもしなかったぞ。

 これは本人に聞くべきか?

 いやいや、それはあまりにもデリカシーがなさすぎ……って、えー!

 腹押さえてめっちゃキツそう。

 うん、聞こう! 聞かなきゃダメだ!


 「……大丈夫?」

 「…うん、大丈夫よ。朝、何も食べてこなかったから少しお腹が空いただけ」


 今にも倒れそうなんですけど?


 「……まだ授業中だけど僕のパンひとつあげようか?」

 「……大丈夫よ、うっ。やっぱ、頂戴!」


 うわー、授業中なのに食べちゃったよ。

 にしてもすごい食いっぷりだな。

 これでよく誰も気づいてないってのがすごいわ。

 挙げ句の果て完食してるし。


 「……もう大丈夫?」

 「えぇ、これで私も元気よ!」


 いつも通りの白井さんに戻った。

 あれから、白井さんにはお礼に手作り弁当をもらった。

 ……女子から食べ物もらったの初めてかも。



      【白井さん視点】

 「ぐぅー」


 しまったわ…。 まさか授業中にお腹が鳴ってしまうなんて。

 藤代くんに聞かれてたら恥ずかしい……。

 朝食を食べるのを忘れてしまったのよね……。

 さすがにきついわ……。

 うっ! お腹…空いた…。


 「……大丈夫?」


 き、聞いてきた!?

 やっぱ聞こえてたってことよね……。

 それでも私を心配してくれるなんて優しすぎるわ!


 「…うん、大丈夫よ。朝、何も食べてこなかったから少しお腹が空いただけ」


 うっ! ……もう限界かも。


 「……まだ授業中だけど僕のパンひとつあげようか?」

 パン!? どうしよう…。

 ここは断るべき…。

 「……大丈夫よ、うっ。やっぱ、頂戴!」


 いや、やっぱ食べるわ!


 むしゃ、むしゃ、むしゃ、むしゃ。

 お、美味しいわ! 藤代くんは天から舞い降りた神!

 あら、もう全部食べちゃったわ。

 藤代くん、あなたは私の命の恩人よ!

 本当に感謝するわ!


 「……もう大丈夫?」

 「えぇ、これで私も元気よ!」


 お礼にカッコつけて私の手作り弁当なんて言っちゃったけど今更、実は親が作りましたなんて言えないわよね……。

 ま、いいわ! 藤代くんも嬉しそうだったし!

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