第6話 忘れ物
【藤代くん視点】
学校に着いたらいつも宿題を提出する。
それはいつもの事なのに今日はなぜか白井さんがカバンを漁り、焦っていた。
「……どうしたの?」
「……な、なんでもないわよ。あははー」
「……?」
もしかして宿題を忘れたのか?
いや、白井さんに限ってそんなはずはない。
それでも少し心配になって来た。
「……もしかして宿題忘れたの?」
「そ、そんなわけないでしょ!」
あ、この反応は絶対に忘れたな。
白井さんが宿題を忘れるなんて珍しい。
何か昨日あったのだろうか。
「……よかったら一緒に先生に言おうか?」
「だ、大丈夫だから。あったー!」
おっ、宿題を見つけたのか、白井さんはいきなり大声をあげた。
でも、その宿題には何も書かれていなかった。
「……やってないけど」
「……嘘でしょ」
白井さんの顔は完全に絶望していた。
だが、宿題自体を家に忘れてくるよりはマシだ。
「……見してあげようか?」
「……お、お願いします」
白井さんは珍しく僕に敬語を使った。
相当、焦っていたのだろう。
無事、白井さんの宿題は終わり、いつもの白井さんに戻ってこっちも一安心した。
よかった、よかった。
【白井さん視点】
学校に着いたらいつも宿題を提出します。
なのに……。
ない、ない、なーい! 宿題がない!?
どうしよう、忘れて来ちゃったかも……。
「……どうしたの?」
「……な、なんでもないわよ。あははー」
「……?」
もしこれが藤代くんにバレたら恥ずかしいどころじゃないわ!
でも大丈夫。まだ宿題を忘れたことには気づいてないみたいね!
「……もしかして宿題忘れたの?」
なっ、なんで分かったの!?
こうなったら仕方ないか……。
宿題見してくださいって言うのよ!
「そ、そんなわけないでしょ!」
でもそんなこと恥ずかしくて言えなーい!
「……よかったら一緒に先生に言おうか?」
先生に言ったら余計にまずいでしょ!
ん? こ、これは!
「だ、大丈夫だから。あったー!」
やった、やっと見つけたわ!
って、問題を一問も解いてないじゃない!
「……やってないけど」
「……嘘でしょ」
あー! 昨日、徹夜でゲームしてたのがいけなかったんだわ!
夢中になりすぎて、宿題の存在忘れてた……。
「……見してあげようか?」
いいの!?
ここはもう恥ずかしいけど、頼むしかないわ!
「……お、お願いします」
ふ、藤代くんの字、綺麗だわ。
で、できたー!
藤代くんには感謝しなきゃね!
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