新人美少女配信者タカハシちゃんっ!
風宮 詩音(かぜみや しおん)
新人超絶美少女配信者
〝美少女〟
〝顔かたちの美しい少女〟
可愛いという基準は人によって変われど、だいたい美少女と呼ばれる人は好みに関わらず整った顔立ちで誰であれ悪い印象は持たない。
人々の中心、みんなの憧れ、人生の勝ち組……。
誰もが憧れる称号。
周りの誰もが優しく、可愛い可愛いと人が勝手に集まってくる。
とても幸せだった。
幼稚園では男女関係なく皆友達。
小学校では他学年からも慕われる人気者。
中学校で他校出身の人がいても人気は変わらず。
それゆえ告白されることも多いけど今まで一度もOKしたことがない。
まあほら…美少女はみんなの美少女だし誰か1人とだけとか不公平だし変な噂とか人気がなくなるの嫌だし強いて言えば私の好みというか私にだって気になる人の一人くらいいるわけで……。
そう。そんな私は自慢じゃないが正直嫌なことなんて1つもなく15年生きてきた。
春からは花の女子高生。
待ちに待った美少女JK爆☆誕。
友達と帰りにスイーツとかショッピングとか体育祭でチアガール任されたり文化祭でメイド……はなんか恥ずかしいけど皆で同じシャツ着て……キャー。
これは素晴らしい青春の未来が見えますねぇー。フーー↑↑
※※※
何が「フーー↑↑」だよ片腹痛過ぎて片方の脇腹だけ摘出して縦に伸ばしたアップルのロゴみたいになってやろうか(?)
思い出しただけであの頃の自分を殴りたくなる。跡が残らないくらいのギリギリの強さで殴りたい。
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……
なんでこうなったの……私何もしてないのに……
※※※
高校に入り3ヶ月。体育祭も予想通りチアガールを任され楽しく終えられた。この感じならこの3年間も今までのようにやっていける。
はずだった。
ある日、その日は待ちに待ったプール開きだった。また私の人気が上がっちゃうなぁと何日も前から楽しみにしていた。当然用意も完璧。前日に必要なものは何度も確認した。忘れ物なんてなかった。ないはずだった。
「あれ?水着ない…」
「えー忘れちゃったの?あんたの水着姿期待してる人たくさんいるのに可愛そうだなー」
「とか言って実は自分が見たかったんじゃないの?w」
「ないないーw」
私の近くにいた2人はそう単純に笑い合ってる。
「まあ忘れちゃったのはしょうがないし、先生に言ってきたら?」
こちらは2人とは少しかわっておとなしめな子。
「あ、あぁーそうだね。おっかしいなぁーちゃんと確認したのになぁー」
「まあ、よくあるよね」
その子に合わせて笑っているうちもどうも違和感を感じ続けていた。
ない…ない…部屋のどこにも水着がない…
「お母さーん!私の水着どっかやったー?」
「えー?あんた昨日ウキウキでカバンに入れてたじゃない?お母さんは知らないわよー」
……
「そっかー」
※※※
またある日、地理の授業。
「あ、そうそう今日の授業こないだ配った冊子使うからロッカーにある人は今取ってきてー」
あれは確かしばらく使わないからロッカーに入れとけと先生が言ってたし、配られたときに入れといたはず。
窓側最前列の席から後ろのロッカーへ。
百均のダイヤル式の南京錠にはもう慣れて片手で簡単に開けられる。
冊子…冊子…………?あれ?
え、、、冊子だけじゃない。保健の教科書もない……え、持って帰ったっけ……。
……。そんなことを考えている間に同じように冊子を取りに来た人たちが帰っていく。
パッと見ないしちゃんと探してる時間もないか……。
そのまま自分の席を通り越して教卓の先生のもとへ。
「先生冊子忘れちゃったんで隣の人に見せてもらいます…」
「え?お、おう。珍しいなお前が忘れ物なんて」
そう言って席に戻る途中、どこからかヒソヒソと声が聞こえる気がした。
「ただいま〜」
「おかえりー、洗っちゃうからお弁当箱出してー」
「はーい……、………?」
いくらカバンを漁っても弁当箱は出てこなかった。
「あっ………、ごめん…お弁当箱学校に忘れてきちゃったっぽい…明日はなんかてきとーな入れ物でいいよ」
「え……あ、そう。明日はちゃんと持って帰ってきてね」
「……うん」
なかった。部屋中探し、次の日学校でも探した。
冊子と保健の教科書、お弁当箱。
全部なかった。
「いただきます…」
「いただきまーす……ってなんか最近元気ないね?どしたの?」
「いや……何でもないy………!」
2時間目のあとの休み時間までは確かに麦茶が入っていた水筒が、空だった。
急いでカバンの底を触っても漏れた様子はない。
5.6時間目美術
来週から油絵やるから体育着にジャージでこい。
そんな張り紙も1週間で掲示板の端までおいやられていた。
昼休み残り10分。
体育着もジャージもよくわからない布切れにすり替えられてた。
これは忘れたとかそんなものじゃない。
体育着とジャージの袋にそれ以外の物、白いシャツならまだしもよくわからない布切れなんて入れるはずがない。
とりあえず隣のクラスの子に借りて美術はなんとかなった。
しかしホームルームのために教室に帰ってくると、使わないからと机に置いていったペンケースが中身を全てぶちまけて落ちていた。
確かに4時間目の後チャックはしめた。それに落ちるようなところにおいてはなかったはず……。
落ちたペンたちを入れたペンケースや他の荷物をカバンに入れたとき、また違和感。
まただ。
また無くなった。
簡易のタッパーみたいなお弁当箱も空の水筒も。
「ただいま……」
「おかえり、お弁当箱あった?」
リビングから声だけ聞こえる。
「……。無かった」
「そっか」
「あ、そうそう大ちゃんきてるわよ」
「へぇっ!?なんで!?」
「なんか渡すものあるって」
「お母さん買い物行ってくるから……あとはゆっくり……。大ちゃんもゆっくりしてってね」
リビングからバックを持ったお母さんが出てきた。
そしてそのまま玄関で立ち尽くす私の横を抜けていき。
「行ってきまーす♪」
ガチャン。扉の閉まる音で我にかえる。
リビングのソファに座る大ちゃん ー親同士が幼馴染4人組という生まれる前からの幼馴染、同じ学校同じクラス。真面目そうなメガネ男子だけど陰と陽のいい感じに中間にいる、優しいー は出された紅茶をすすっていた。
「どしたの?わざわざ来るなんて」
と言っても家は隣だが。
「ん、こないだ地理の冊子無いって言ってたじゃん?先生が余り見つけたから渡しといてって」
そう言ってカバンからきれいな冊子を取り出す。
「あ……ありがとう」
「最近悩んでる…みたいだけど、なんかあった?」
「…ん、ううん、なんもないよ…」
「………、嘘でしょ?お母さんさっき言ってたよ。最近物がよく無くなってるみたいだって」
お母さん……余計…なことじゃないけどわざわざ言ったんだ…。
「なんか最近うちの学年の裏掲示板?みたいなのがあるって噂で、多分それが関係してるんじゃないかなって思ってるんだけど……なんか知ってる?」
「いや…私機械音痴だからそんなの見つけられないし…はは…。大ちゃんがくれたパソコンもろくに使ってないし…わかんないなぁ…」
去年、何かの抽選で当たったけどもっといいパソコンあるからと大ちゃんがパソコンをくれた。まあ今じゃ部屋の置物になっているが……。
「そっか、また俺も調べてみるからなんかあったら言ってね。じゃあ、帰るね」
「うん、ありがとね……色々…」
ガチャン。
1人の家は夕方にしても妙に暗く感じ、なんだか寂しさで溢れている……ような気がした。
ベッドに倒れ込み手のひらより大きいくらいのくまの人形を抱きしめる。これも大ちゃんがくれたもの。でも寂しさはちっとも減らない。
それどころかもっともっと寂しくなる…気がする。
※※※
「おはようございまーす」
玄関前の体育教師に適当に挨拶して入っていく。
今日はみんなとタイミングがずれたのかうちのクラスの下駄箱には誰もいなかった。
慣れた手つきでローファーをしまい上履きを床に落とす。
「いっ…………え?」
上履きに入れた足にちくっと何かが刺さった。
「……!」
上履きの中には無数の画鋲。
幸いにも落とした衝撃でいくつかは逆さに上履きの中に刺さっていた。
「え…、え、」
追いつかない脳みそをほぉって画鋲を抜いて、取り出す。
誰にも見られてないのが良かったような寂しいような。
ひとまず画鋲を下駄箱の中に隠して立ち上がる。
ふらふらとおぼつかない足、階段もなんだか人が少ないような気がした。
上り終えた5階、みんなの話し声はなんだか安心する。そう、私には皆が、まだ味方がいる。
‥.‥.‥.‥.‥.
おかしいとは思っていた。
ものが無くなるのもたまに聞こえるヒソヒソ声も。
そして、私が入った瞬間、教室が静まり返った。
カッター、それは物を切ったり削ったりするための道具。
包丁、それは食物の調理、主に切るための道具。
ハサミ、それは物を切断するための道具。
カラースプレー、それは大きな絵を描いたり塗ったりするための道具。
どれも、私の物や机を傷つけたり汚すためのものじゃない。
色々な刃物で傷つけられそのまま刺さっていたり周囲に落ちていたり、スプレーでめちゃくちゃに汚されている。まるでダーツの的のように、汚されて傷つけられて。
そして、そんな机の中央に、今も少しずつ水が漏れる、ひび割れた花瓶と………きれいな花。
汚れの中に咲くその花は、きれいで…とてもきれいで。スポットライトを浴びているかのように輝いていて。私の視線を一瞬で奪って…
私の心を壊した。
「あぁ…ああぁ………」
力が抜ける、声が漏れる。
その場に力なくふにゃりと座り込み、声にならない嗚咽が漏れる。
だがそんな声も皆の声でかき消される。
「ハッハハハハハw」
「キャハハハハハw」
「え?wえ?w泣いてる?wキャハハハハハw」
「泣いたw泣いたw」
「「あぁ…あぁ…」だってwキャハハハw」
ただその声は同情とか心配とか、そんなものではない。
笑いだった。
※※※
気がつけば家だった。
きっとあのときの私は笑い声から逃げるように階段を降り、画鋲を撒き散らして靴を出し、一直線に家に走ったのだろう。多分
手首が痛い、どこかで転んだのだろうか…。
それすら覚えていない。
お母さんは…?突然帰ってきた私に何か言ったのかな……、というか今何時だろう。
そうやってカーテンを締め切った部屋でなんとか見つけたスマホには、何件もの通知がきていた。
あんなやんちゃしない優しい大人しいタイプの友達に混じって大ちゃんからのメッセージの通知……、でも今は見る気になれなかった。
※※※
何日経ったんだろう。トイレとお風呂以外は1日のほとんどを部屋ですごす。最後にお母さんとちゃんと話したのがいつかも思い出せない。
やることも徐々に尽きてくるし飽きてくる。
だからパソコンを使ってみることにした。何もわからないなりに使い方を調べていたらTwitterで色々教えてくれる優しい人に出会った。くまの人形のアイコンにくまって名前。それらに加えその優しさゆえに大ちゃんを思い出してしまう。いつか謝らないと。
その日もまたくまさんと話していた。
┏━━━━━━━━━━━━━┓
<最近配信流行ってるらしいよ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━┓
┃ 配信…ですか、あんまり┃
┃ よく知らないです >
┗━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━┓
<僕のおすすめ貼るね ┃
┗━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
<水平思考やろうぜ!私出題者な ┃
┃https://youtu.be/0H4EH4nD2PY ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━┓
┃楽しそう…でも私にはあんな ┃
┃アバター作るお金ないですよ… >
┗━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
<バーチャルじゃなくてもいいんじゃ ┃
┃ないかな?普通に顔出し配信とか? ┃
┃なんならカメラ余ってるからあげよう┃
┃ か? ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━┓
┃えっ?いいんですか? >
┗━━━━━━━━━━━━┛
※※※
「あ、1人来てくれた。え……と見えて…ますか?どうも〜タカハシです、初配信です」
┏━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ こんばんは ┃
┗━━━━━━━━━━━━┛
「こんばんは〜しかくしかく……しかくさんって呼びますね」
┏━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ 可愛いですね、ファンにな┃
┃ っちゃいました(*´ω`*) ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━┛
「え、そうですかぁ〜ありがとうございますっ」
※※※
「配信って楽しいな……、くまさん…見てくれたのかな?しかくさんがくまさんだったり…………え?あれ…」
予期しないエラーが発生しました。
「え、メッセージが送れない……くまさん側…私側?ネット繋がってるよね?」
くまさんのアイコンをタップする。
入力された単語の検索結果はありません。しばらくしてからやりなおしてください。
「え……、くまさんのアカウントがない…」
なんとか調べてみた。
Twitterのアカウントは消しても30日間なら復活させられる。調べもののコツもくまさんが全部教えてくれた。
「間違えて消しちゃったのかな?」
きっと戻ってきてくれるよね……。
※※※
1日。
「えーと、今日は「アルパエル」っていうゲームをやります。アルパエルは…いろんな可愛いキャラと学園生活ができる…ふぁんたじーあくしょんあーるぴーじー…らしいので、楽しみでーす。あんまりあーるぴーじーってやんないからよくわかんないけど……まあどうにかなるでしょ、しかくさんおすすめしてくれたんだし色々教えてね〜」
5日。
「みらくるブラゲ学園……「魔法の学校で繰り広げられる愛と青春のファンタジーRPG」って書いてあって面白そうだったし、ずっとアルパエルじゃあしかくさんも飽きちゃうかなって思ったので今日はこれやりまーす」
15日。
「ハイスクールシュミレーター2020……なるほど…ストレス発散…………………………ヤリカエシ…フクシュウ……え?何も言ってないですよ?空耳じゃないですか?……気を取り直して…うん、私結構こういうゲームも好きですよ〜、てかめちゃくちゃ楽しいです〜」
29日
「生徒会員シュミレーター……ん?最近こんな感じのゲームばっかな気がする、ってしかくさんもノリノリだったじゃないですか〜、私は私の好きなゲームをするんですよ〜」
31日
「くまさん…なんで…なんでいなくなっちゃったの……なんで私を置いてくの………くまさん…」
涙が止まらない。私を救ってくれたのはくまさんなのに…くまさんがいなかったら……。
その時スマホが光った。
何かの通知だと思う。
急いでスマホを手に取る。
「電話……大ちゃん……」
「…もしもし」
「もしもし……大丈夫…?」
「う…ん…今はなんとか……ね。大ちゃん…どしたの?」
「うん、色々調べたんだけどね……、前に学年の裏掲示板があるって言ったよね?そこに書き込んでたある人が指示して…誘導して…やってたみたいなんだ…こないだのあれ…みたいなこと……物を盗るタイミングとか…あの日の……机のあれのやり方とか……」
「でも…それって……もとからきっかけがあればそんなことしたいって思ってた人がいたってことだよね………?」
「まあ…そうだね……あのあと学年集会があってね……やってた奴ら…男子はストーカー的なやつとか女子だと嫉妬してたやつとか……男女両方ただただ嫌がらせしたかった人とかストレス発散したかった人とか……」
そんな理由で……。
「ああ…そうなんだ…………ねえ…私の味方は…いたの?」
「もちろん。学年集会の後奴らと言い合いとか色々あって……それで学年が大変なことになって……えっと…混乱?……というか反発のしあいで…授業どころじゃなくて……生徒と先生……何人か不登校になっちゃってて……。今もう………学年崩壊って…言われてる状態なんだ」
「私の…せいで……そんなことまで……」
「え、いy」
「私のせいじゃない。って言いたいんでしょ?…もちろんその指示してたやつも…許せないけど……もとからあんなことしたいって思ってた人にきっかけをあげただけだもん……」
「う……、あっそうそれで指示出してたやつなんだけどね……1ヶ月前くらいまで掲示板にいたんだけど…何故かもう書き込まなくなってて……そいつのTwitterのアカウントも消えちゃってるんだ……「くま」って言う名前のやつで……今スクショ送ったけどこんな感じのアイコンとプロフィールの人」
「くま、さん…」
見なれたアイコン…覚えやすいユーザー名…
その時、2枚目の写真が送られてきた。証拠として″掲示板,,のくまが私の知るくまさんのアカウント画面を開いているスクショ。
そこにあるボタンはフォローではなく〝プロフィールを編集〟
「え、知ってる人?………………。え、おーい、もしもし…どうしたn」
┏━━━━━━━━━━━━┓
┃ 通話を終了しました ┃
┗━━━━━━━━━━━━┛
くま、さん………くまさんだったの…じゃあなんで………なんで私にあんなことして………優しくしたの………。
涙が溢れて、溢れて溢れて溢れて。つらかった。
ピコン、と通知の音。
「つい…たー?……」
涙を
「「すみません、配信者のタカハシさんのアカウントですか?」………!■■(しかくしかく)!?」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃もしかして…しかくさんですか ? >
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
<はい!たまたま見つけて、もしか ┃
┃したらと思ってメッセージ送っちゃ ┃
┃いました! ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
…しかくさん……
┏━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ちょっと悲しいことがあった ┃
┃ので気分転換に今から配信しよ┃
┃うと思うんですけど…来てくれ┃
┃ますか? >
┗━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━┓
< もちろん! ┃
┗━━━━━━━━━━━━┛
うん…そうだよね…今の私にはしかくさんがいる。くまさ……くま…………あの人のことなんて忘れよう。
「どうもータカハシでーす。今日は久しぶりにアルパエルやろうと思います」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ 今日は一緒にできそう┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「お、じゃあちょっと難易度高めのクエ行きますかー」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ タカハシちゃん道間違えてる┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「え!?あ、こっちかぁー」
「あれ?これ討伐対象のボスじゃなくない?」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ あ、それ討伐対象の色違いの ┃
┃ 強化版。めっちゃ強い ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「え、ちょっと待って、やばいやばいやられるやられる!」
「クエの報酬で武器強化してくるねー……てあれ………できない…」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ それ見た目似てるけど┃
┃ 違う素材かも… ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「あ、ホントだアイテム名違うじゃん……クエ大変だったのに…」
「てことでごめんねしかくさん、またクエお願い」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ (`・ω・´)ゞ!! ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「はぁー楽しかった。じゃあそろそろ配信終わるね。今日もありがとね、しかくさん!」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ お疲れ様ですー ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
配信終了。
軽く伸びる。久々だった。こんなに楽しくゲームをやったのは。
もやもやしてたものもなくなって、なんだか気持ちが軽い気がした。
トン、トン、トン、トン。
階段を上る音。お母さんがご飯を持ってくる。
「……。…………!」
ガチャ。
「!?どうしたの?」
「お母さん……、ごめんね…心配かけて………ちょっとだけ楽になった………私も一緒にご飯食べたい…」
「……!………。うん。一緒に食べよ」
そう言ってお母さんは届けるはずだった私のご飯のお盆を床に置き…私を、強く抱きしめてくれた。
※※※
少しずつ部屋から出ることも増えた。
だけど配信はほぼ毎日やっていた
まあ家から出ないので結局時間はあるし。
しかくさんが私を生き返らせてくれた。しかくさんがいれば私は生きていける。
だけど…しかくさんがいなくなったら私はもう……。
だからしかくさんのためだけに私は配信し続けるって決めた。
※※※
「まあ、それで結局縦に伸ばしたアップルのロゴになる計画はなくなったんですよね」
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ うん見た目的にアウトだから ┃
┃ やらなくてよかったと思うよ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「美少女だからそれで中和できるのでは?」
┏━━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ えっ、なに恐ろしいこと┃
┃ 言ってんの? ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━┛
「おい今タカハシのことサイコパス美少女だと思っただろ?お?お?」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ オモッテナイヨ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「棒読みやめろ棒読みw………あ、ちょい待ちちょっとミュートするね」
「ご飯もうできるわよー」
「んー今いくー」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ ご飯の時間かな? ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「え!?しかくさんなんでわかったの?」
┏━━━━━━━━━━━━━┓
┃■■ 愛ゆえかな…(キリッ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
「さすがしかくさん!愛の力だね〜。……ってことで今日はここまでね〜…じゃあまたね〜しかくさ〜ん」
※※※
暇だな〜カレー美味しかったな〜やっぱお母さんのカレーだな〜
……。
…………。
……………。
寝るにはまだ早いし……かと言ってゲームやるのも……うーん。
たまには自分の配信見てみるか。
いや待ってやっぱ恥ずかしい………、うーーん……。
カチカチ〜っと。
え〜と今日のでいっか。
暇だったし興味もあったから結局見ることにした。でも家族に聞かれるのやだからイヤホンはするけど。
あれ?イヤホン壊れてる?音聞こえないじゃん…おっかしいな〜ってあれ他の人の動画だと音出る……え?あれ……イヤホン抜いてみるか………、……あれ?スピーカも壊れた?でも他の人のだと音出る………え、…私の配信だけ?え、なんで音ないの………………?
も〜音ないならしかくさんも言ってくれればよか…た……の…に………………!?
え、待ってなんでしかくさんと会話できてるの…え、音ないのに……なんで…………。
┏━━━━━━━━━━━━━┓
<ねえねえ、タカハシちゃん ┃
┗━━━━━━━━━━━━━┛
新人美少女配信者タカハシちゃんっ! 風宮 詩音(かぜみや しおん) @kazegitune
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