第13話 厄介ごと

わたしが、青光草のポイントに印を付けて数日後......。


午後一番で、イベントが発生した。


冒険者組合の入口を乱暴に開けて、Aランクの冒険者パーティのリーダー・マークさんが駆け込んできたのだ。


「マークさん、そんなに慌てていったいどうしたんですか?」


「ユリアちゃん、ごめん。組合長に話があるんだけど時間が取れるか聞いて来てくれるかな」


「急ぎなんですね、直ぐに聞いてきますから」


わたしは、普段のマークさんからでは考えられないような慌てぶりに、緊急事態が起きていると感じたので急いで組合長へと向かった。


コンコン


ノックの後、わたしは組合長室のドアを開けると声を掛けた。


「組合長、いまよろしいですか?」


「おう、ユリアちゃんか...どうした?」


「実は、マークさんが駆け込んできて緊急の用事があるようなんです」


「あ~、分かった。直ぐに行く」


わたしの話を聞くと、組合長は即決で直ぐに対応してくれた。


わたしは、組合長の返事を聞くと直ぐに窓口へと舞戻り、マークさんを伴って会議室に入り組合長が来るのを待っていた。


「どうした、マーク。緊急の用件か?」


「はい。実は、隣街に向かう途中で盗賊団に襲われまして、何とか振り切って戻っては来たんですが、奴らがこの街に向かって襲撃を仕掛けて来るんじゃないかと」


「そうか。で、仲間や商人達は無事だったんだな」


「はい、人命優先で対処しましたから」


「それならいい。じゃ、その盗賊団とやらの始末をしないといけないな。

ユリアちゃん、緊急招集の鐘を鳴らしておいてくれ」


「はい、了解しました!」


組合長の指示に従いわたしは組合長室に向かうと、緊急招集の鐘を鳴らすスイッチを指で押さえた。

それと同時に、街の中では緊急招集の鐘の音が鳴り始める。

そして、3分ほど鳴らしたあとスイッチから指を離すと、わたしは自分の窓口へと戻った。


30分後、組合のホールの中は冒険者で溢れかえっていた。

そこへ、組合長が現れて次々と指示を飛ばしていく。

そして、15分もすると今度はホールの中には誰も残って居なかった。


すると、ホールで指示を出していた組合長が...

「シンシア、それとユリアちゃんは医療班の編成をよろしくな」と、私たちに声を掛けると組合の外へと出ていった。


「シンシアさん、以前の感じで準備しておけば良いですか?」


「そうね。テントを設置する場所も同じで良いと思うわ」


そこから、30分ほどで準備を終わらせると、残りの業務を他の受付嬢に任せてシンシアさんとわたしは門の近くの広場へと向かった。


そして、広場に到着した私たちは冒険者に手伝って貰い医療テントの設営を始めたのだった。


その日は、盗賊の襲撃は無かったが...


明けて、次の日の朝方。


魔物を従えた盗賊達が、門から100mほど離れた場所にその姿を現したようで、防壁の上に居る冒険者が手旗信号で合図を出していた。


マークさんから事前に聞いて知ってはいたが、魔物使いが厄介な存在である。

ただ単に使役だけなら数は少ないと思うが、召喚だとその数を把握するのは難しいかもしれない。


わたしが、ひとり色々と考えていると...


防壁の門が開けられ冒険者たちが迎撃の為に門から外へと出ていくところだった。


わたしがひとりで考えても仕方が無いことだが、とりあえずは医療班として仕事に専念しようと思う。


昨日の組合長の作戦では、Bランク以上の冒険者は盗賊の相手をする事が決まっている。だが魔物の中に強い個体がいるのか、下位ランクの冒険者が怪我をして医療テントへと連れて来られる人数が増えてきていた。


このことからも、魔物は使役ではなく召喚しているというのが確定のようだ。


「シンシアさん、この人数をまかないきれますか?」


「教会の方にも応援を頼まないといけないかもしれないわね」


そう言うと、シンシアさんは近くで治療をしていた、組合の職員にお願いして教会へと走ってもらった。

そして、わたしはシンシアさんに目配せをすると、このテントの中にいる怪我人に対してエリアヒールを唱えて一気に治療を施した。


「しばらくは、これで持ち堪えられそうね」


「でも、盗賊と魔物を倒せているのでしょうか?」


「ここに居ると分からないけれど、倒せてはいるんじゃないかな」


上位ランクの冒険者はテントの方には来ていないので大丈夫だとは思うが、下位ランクの冒険者たちが心配ではある。


そこでわたしは、御手洗いを理由にして戦況を確認してみる事にした。


医療テントを出て、御手洗いへと駆け込む。

そして、人気の無い所を探索魔法で探し当てると、直ぐにその場所へと転移した。

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