第5話 受付嬢として
わたしがお試しならばと了承すると、商業組合のお姉さんが手早く推薦状を書いて手渡してくれた。
「これを、冒険者組合の窓口に見せると手続きをしてくれるから、少しの間でも良いから頑張ってみてね。でーもー、貴女だったら大丈夫だと思うわ」
何が大丈夫なのか?わたしには分からないが、取り敢えず仕事はしてみようと思う。
翌日......。
宿の女将さんに、冒険者組合で受付嬢の面接を受けくると伝えてから宿を出る。
「何故か毎日この道を往復しているような」
そんな独り言を口にしながら、冒険者組合を目指してわたしは歩いて行く。
冒険者組合の扉を開け中に入ると、窓口を目指して真っ直ぐとつき進んだ。
女性も居たのだけれども、圧倒的に男ばかりだったので絡まれるのが嫌だったのだ。
「済みません。商業組合の紹介で来たんですけれども、これをお願いします」
と言いながら、わたしは窓口のお姉さんに商業組合のお姉さんが書いてくれた推薦状を手渡した。
「はい、お預かりしますね」
そう言うと、お姉さんは手に取った推薦状を何かの機械に乗せる。
「お仕事の面接の件ですね。じゃ、こちらにいらして下さい」
お姉さんにそう言われたわたしは、その後を素直についていく。
向かった先は、応接室のようなところだった。
「ここに座って」
勧められるまま、わたしはソファに腰を下ろした。
「まず、組合での受付嬢の仕事の内容から説明するわね」
お姉さんの説明をまとめると、おおよそラノベの物語の中で活躍している受付嬢の業務そのものだった。
魔物の知識も既に記憶しているいるので問題はないだろう。
強いて言えば、この地域の地図を把握する事が最初の大仕事となるだろう。
「そう言えば、挨拶もしないままで話し込んでしまったわね。
私はシンシアよ。この組合で受付嬢のチーフを任されているの」
「そうなんですね。わたしも、挨拶が遅くなってしまい済みませんでした。
わたしは、
お試し期間という事で、今日から七日間シンシアさんの下で受付業務を体験することとなった。
「私とお昼ご飯を食べたら、午後からいっしょに受付業務をやってみましょう」
「はい、よろしくお願いします」
こうして、わたしの受付嬢としての体験期間が始まった。
七日目......。
わたしは、シンシアさんの下で取り敢えず一通りの業務を体験する事が出来た。
「どうだった、ユリアちゃん」
シンシアさんが呼ぶ、わたしの呼び名がちゃん付けとなっていた。
わたしは、もう二十歳なのだが。
まぁ、童顔だから仕方が無い。
「え~と、何とか一通り業務は覚える事が出来ました」
「うんうん...私から見ても、合格点をあげられる仕事だったわよ。
出来ればこのまま続けて受付嬢として業務をやってくれると、私としては嬉しいのだけれど」
「ただ、一人でだと...厳つい男の冒険者の方々の事が、まだ怖いんですけれど」
「じゃ、最初は女性の冒険者限定でやってみましょうか」
シンシアさんの提案は願ってもない事だったので、わたしは「はい」と返事をしてしまっていた。
「じゃ、明日からも頑張りましょうね」ニコッ!とシンシアさんに言質を取られてしまっていた。
そして、翌日から本格的に冒険者組合で受付嬢としての業務がはじまった。
1年後......。
「ユリアちゃん、この依頼をお願いするわ」
「はい、ゴブリンの討伐ですね。このところ数が多くなっているので無理をしないで
下さいね。頃合いをみて撤退するのも大事ですからね」
「分かっているのわよ。無理はしないから」
そう言うリーダーを含む女性5人で構成された冒険者パーティーは組合を出ていった。
その後ろ姿を見ながら、わたしは隣の窓口にいるシンシアさんに声を掛けた。
「シンシアさん、大丈夫でしょうか?」
「ん~、何とも言えないわね。
彼女たちの実力なら問題はないと思うけれども、不測の事態が起きた時に対処できるかどうかは、彼女たちの戦闘を実際に見たことがないから判断出来ないわね」
最近のゴブリンの増え方は、異常そのものなので心配だ。
そして、その日の夕方...わたしの不安は的中してしまった。
彼女たちのパーティーメンバーが一人、ボロボロの格好でギルドへと駆け込んできたからだ。
「ゴブリンに仲間が連れ去られたの」それだけ言うと、その女性は気を失ってしまった。
すぐに、組合の医務室へと運ばれていき治療が始まった。
その間に、組合長が二階からホールへと下りてきて、救出する為の作戦が練られていった。
丁度、各冒険者が組合に帰ってくる時間帯だったのですんなりと準備が整っていく。
そして、Bランクの冒険者パーティーを中心にして、30名が救出へと向かった。
その間、わたしは通常の窓口業務をこなしていく。
そこへ......。
「ユリアちゃん、ごめんなさい。医務室の方へ来てくれる」
シンシアさんが慌てた感じで、わたしを呼びに来た。
その要請に応じて、わたしが医務室に向かうと先程の女性が危篤となっていた。
「毒の種類が分からないの、治療をお願いできる」
「分かりました」
わたしが上級の治療魔法を使えることは、組合の中でも一部の人しか知らない。
シンシアさんはその中の一人だ。
取り敢えず、わたしは彼女を助ける為に魔法を行使した。
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