第4話 施設巡り
翌日......。
少し遅めの起床になってしまったが、疲れはすっかり抜けていて元気な朝の目覚めを迎えることができた。
そして身支度を整えると、宿の食堂で朝食を頂き、鍵を女将さんに預けると街中へと繰り出した。
昨日出来なかった、施設巡りをするのだ。
門番から渡された紙を見ながら街中を移動する。
全ての施設は街の中心地に在るようで、そこまで行けば歩き回らずに済むようになっているようだ。
日本でいう処の、官庁街みたいなものかな。
先ずは、普通の住民登録をする為の施設へと入ってみる。
そこはやはり、ザ・役所という感じの施設だった。
取り敢えず、窓口で身分証について説明を受けてみた。
説明を受けてみて分かった事は、職業にあった身分証を作るとその職業の特典があるという事だった。
例えば、冒険者組合と商業組合の身分証は各国共通で国を跨いで出入りするのに入国税を払わなくても良いとのこと。
その他の職業だと、国内の移動は無税だけれども、国外に移動する場合は税を取られるという事らしい。
もう一つ注意点として窓口の人が言っていたのは、宿での宿泊ではたとえ長期であっても一般の身分証は作れないという事だった。
わたしの場合は、冒険者組合か商業組合のどちらかになるだろう。
両方の身分証を作っている人もいるようだが、税を1.5倍払う事になるのでわたしは却下だ。
役所を出たわたしは直ぐには決められないと思い一旦宿に戻る事にした。
「あら、お帰りなさい。早かったのね」
「はい、説明は聞いてきたんですけれど、直ぐには決められないかと思って一旦保留にしました」
「まだ若いんだから、焦らずに決めなさい」
会話の後、女将さんから鍵を受け取ると、わたしは部屋へと戻った。
住民税を納めると一般の役所でも身分証を発行してくれるらしいので、このままこの街で暮らしていくのなら、住み込みか家を借りないと駄目なようだ。
冒険者はキン肉マンになりそうで嫌だし、商業は商売をした経験がない。
何が良いだろう。
学生の頃は、喫茶店でアルバイトをしていたから、やるならウエイトレスか受付嬢かな。
そう言えば、身分証にこだわっていたけれども、仕事も探さないと手持ちのお金がどんどん減ってしまう。
日本で貯金していた分は、何故かこちらのお金に変換されてポーチに入っていた麻袋の中に入金されていたが。
手持ちのお金も無限ではないのだ。
女将さんに聞いてみよう。
午後2時になり、宿の食堂の賑わいも落ついた頃......。
わたしは部屋を出て、女将さんを探した。
すると、調理場で後片付けをしていたようで、わたしは声を掛けてみた。
「女将さん、少しだけいいですか」
「どうしたの」
「仕事を探したいんですけれど、どこに行けば良いのでしょうか」
「あ~、それならね商業組合に行くといいわよ。求人用の掲示板もあるから、見てらっしゃい」
わたしは女将さんにお礼を言うと、部屋に荷物を取りに行きそのまま商業組合へと向かった。
通りは、朝よりも人通りが多く、歩くのに時間が掛かってしまった。
目的の商業組合へと入り、窓口へと向かう。
「済みません。仕事を探しているのですが、掲示板はどこにありますか」
「求人の掲示板ね。それなら、ほらあそこの人だかりの出来ている所にあるわよ」
窓口のお姉さんが指差した方を見ると、確かに人だかりが出来ていた。
「教えて頂いて、ありがとうございます」
わたしは、そうお礼を言って掲示板の方へと歩き始めた。
わたしの警戒心が薄れていたのか、一人の男が歩く私にぶつかって来た。
その男の手は、わたしの腰にあるポーチを狙っていたようで掴み取ろうと腕を伸ばしてきた。
咄嗟のところで気が付いたわたしは、男の手首を掴むとそのまま風魔法の力を使って投げ飛ばした。
すると直ぐに、組合内に詰めていた警備の衛兵が男を取り押さえた。
「大丈夫だった」
その声に振り返ると、先ほどの窓口の女性が立っていた。
「はい、大丈夫です」
「それにしても貴女強いのね」
「いいえ、咄嗟に魔法を使っただけですから」
ただこの騒ぎで、この日は掲示板を見ることは叶わなかった。
翌日......。
昨日のリベンジをする為に、わたしは再び商業組合へと向う。
そして、施設に入り掲示板の方へ歩いていると、昨日の窓口のお姉さんが私の方へ歩いてきた。
「こんにちは」
「こんにちは、昨日はごめんなさいね。
こちらで警備をしっかりとしていなくてはいけなかったのだけれど、それでね貴女に薦めたいお仕事があるの」
「それは、どういうお仕事ですか」
「そうねぇ、立ち話もなんだから。こっちに来てくれるかしら」
わたしは、お姉さんの言葉に頷くとついていった。
でもそこは、窓口ではなく応接室だった。
「それでね、お薦めしたいお仕事なんだけれど。
冒険者組合の受付嬢というおしごとなの。
どうかしら、魔法を使って引ったくりを捕まえられる貴女だから大丈夫だと思うの」
「え~と、わたしはどちらかと言うと、お店のウエイトレスの方が良いのですが」
「じゃ、お試しで一週間だけやってみない。
やってみて、断るのは大丈夫だから」
まぁ、仕事はしないといけないし、お試しであればいいかなと軽い感じでわたしはその受付嬢という仕事をやってみる事にしたのだった。
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