第3話 街を目指して

あれから、十日が過ぎた。


色々な事を何とか受け入れることが出来たわたしは意を決して街を探して移動する事にした。


そうそう一つお知らせがあったの、わたしの身体が女の子に変化していたの。


この場所に来た最初の日、一晩寝て起きた翌朝の事だったわ。


着替えをしようと服に手を掛けた時に気が付いたの、二つの膨らみが胸元にあることに。そして、その変化はを除いて身体全体に起きていたの。


こんな事って...。


さすが...異世界‼


もう嬉しくてうれしくて、その日はテンションが上がりっぱなしで大変だったわ。


背丈は日本に居た頃と変わらず168cmと少し高めだけれど、この世界ではまだ人にあっていないから高いのか低いのかの判断は出来ていない。


その他は、不二子ちゃんと変わらないと思う。

わたしの主観だけれども、体重は体重計が無いから分からないわ。


顔の造りはそのままだった。

ポーチの中の手鏡で確認したから大丈夫、わたしは自分の顔が好きだったからそこは凄く安心した。


この世界でどう見られるかは心配ではあるが。



この十日の間、身を守る為に魔法やら剣術と色々と試してみたがやはり魔法が一番しっくりときた。

ただ、魔法だけでは心もとないので杖を使えるようには練習をしてみた。

記憶に残っているプリ◯ュアの真似事ではあるが。



さて、出発するとしよう。

ウエストポーチを腰に巻き、手には杖を持った。

その他の持ち物は全てポーチの中だ。


後は、よく読んでいたノベルの話を参考にして、ボロを出さないように生きるのだ。


そして、わたしの行く先は既に決まっている。

渓谷の先、開けた方角に街のような物が微かに見えているのだ。

そこを目標に、わたしはこの世界に降り立った場所から歩き始めた。


一日目......木々の生える山道は初めての経験だったので、ろくに進む事が出来なかった。

三日目......山歩きにも少し慣れてペースが上がった。

五日目......五割ほど山を下りる事が出来た。


十日目......遂に、山を下りきった。


魔物に襲われるのではないかと緊張の連続だったのだが、その気配すらなかった。


普通ノベルの世界感て、その日の内に襲われるよね。


嬉しい結果ではあったが、緊張に苛まれたわたしの時間を返して欲しい。



まぁ、なんにせよ麓に下りてこれたので、一休みする為にここでキャンプをする事にした。


先を急ぐ旅では無いからね。



翌朝......。

早めに起きて旅支度を終わらせると、街を目指して再び歩き始めた。


深い森の中を抜けて林の所までやって来て初めて鳥のさえずりや動物たち鳴き声などが聞こえてきた。


森の中では一つも聞こえなかったのだけれども、気配も感じなかったし。


フシギダネ‼


まぁでも、生き物が居るという事は、人の営みもあるという事で無人の惑星では無いだろう。


防壁に囲まれた街みたいなのも見えていたし。


決めつけてはいけないけれども。



そして、森を出てから十日目......。


遂に目の前に防壁が姿を現した。


そこには、出入りする用の大きな門が有り、馬の引く荷車を操作している人、旅人の出で立ちの人、鎧を着た人、ラノベでよく見る冒険者風の人など多様な格好をした人が審査の為にならんでいた。


コスプレ大会じゃ無いよね。


それと、多様な人種の集まりでもあった。


わたしは、そんな人たちが並んでいる最後尾に並んだのだが、わたしの後ろには直ぐに大勢の人が並び始めていた。


そして、わたしの審査の順番がやって来た。


「お嬢さん、この街に来た目的を教えてくれ」


「仕事を探しに来ました」


「格好から判断すると、魔法使いか。薬師でもやるのか」


「そうです」


「良いだろう。身分証は...ないな。街に入るのに銀貨1枚だ」


わたしは、ポーチから銀貨1枚を取り出すと門番に手渡した。


「街で暮らすんだったら、早めに身分証を作るようにな」


そう言うと、門番が一枚の紙を手渡してくれた。


そこには、身分証を発行してくれる各施設が書かれていた。


街としての機能が、しっかりと構築されている街のようだった。



こうしてわたしは防壁の門を抜けると、この世界に来て初めての街へと足を踏み出したのだった。



先ずは宿を確保して、渡された紙に書いてある施設を見て回る事にしよう。


泊まる所は何処が良いのか自分では判断出来ないので、道すがら歩いている人やお店の人に聴きながら探した。


「ここかな」


リーズナブルで評判の良かった宿に到着した。


「こんにちは。泊まりたいのですが、部屋は空いていますか」


「あら、可愛いお嬢さんだね。一人なのかい」


「はい。仕事を探しに来たんです」


「そうなのね。じゃこの部屋が良いわね、周りの部屋も女性だから安心して」


「ありがとうございます」


七日分の宿泊費を前払いして部屋の鍵を受け取ると、取り敢えず一休みする為に部屋へとはいった。


そして、ベッドに腰を下ろすと一つ息を吐いた。


ふぅ~!


対人恐怖症では無いけれども、初めての異世界人との会話で緊張して疲れてしまっていたようだ。


結局、この日は外に出る事なく宿の部屋でのんびりと過ごした。

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