第2話 旅立ち
羽田空港国際線ターミナルからアメリカ行きの飛行機に搭乗したした私は希望を抱いていた。
それは、狭い考えに縛られたこの国をやっと出て行けるのだという安堵した思いからだったかもしれなし、新天地に向かう高揚感からだったかもしれない。
確かに私の事を受け入れてくれていた人達は居たのだが、やはりそれは少数だったからだ。
夕刻の午後6時、私を乗せた飛行機は大空へと飛び立ち一路アメリカへと飛行し始めた。
高度10.000mに達した飛行機は水平飛行へと移行する。
そして、夕食として機内食のサービスが始まった。
今回、搭乗するに当たって私はファーストクラスの席を予約していたので、周りの人達を気にすることなく旅を楽しむことが出来る。
機内食もその楽しみの一つだったりする。
ファーストクラス専用のコース料理を堪能して少しのワインを口にした私は眠気を覚え始めていた。そこで私はCAさんに座席をベッドへと形状変化してもらい就寝する事にした。
そして、私はベッドの上で毛布に包まり安心して寝ていたと思う。
途中、エアポケットに引っ掛かったのか機体が一瞬降下するような浮遊感は感じたものの、それがほんの一瞬の出来事だったことから私は気にせずにそのまま横になって寝ていたのだった。
何時間寝たのだろう、CAも起こしに来てくれてはいないようだ。
まだまだ、空の上なのだろう。
そして、再びわたしは目を閉じた。
次に目を覚ました時に、わたしは違和感を感じた元々カプセル型の座席だったのだが、透明なガラスの天井があったからだ。
しかも、身体を半分起こすとそこは見渡す限り壮大な景色の渓谷だった。
えっ、どういう事...???
わたしの思考は、思いがけないに状況パンクしそうになった。
頭をフル回転させて、いままでの状況を確認していく。
羽田空港で確かにアメリカ行きの飛行機に搭乗した。
ファーストクラスの機内食も堪能した。
座席をベッドへとCAさんに形状変化してもらった。
そして、就寝。
あれっ、違和感はない。
あっ...でも、一度だけ浮遊感があったよね。
気にしなかった、わたしが悪いんだけれども。
あの時なの、あの時なんだろうな。
何と無くそう思う。
でも...ここは、何処なんだろう。
そもそも、この座席(ベッド)から表に出られるの。
そう思い、フッと天井のガラスに触れてみる。
すると、光の粒子になってスーと消えて行った。
それと同時にベッドが自動的に元の座席の形状へと戻った。
トランスフォーマー...か!
何故か、ツッコミを入れたくなった。
足元にある靴を履いて座席から、そしてそこにある地面へと足を踏み出した。
すると今度は、今迄わたしが座っていた座席がやはり光の粒子となって消えていった。
そして、座席が消えて無くなった地面の上には、普段わたしが使用していたウエストポーチだけが残されていた。
オー・ミラクル!
そう叫ばずにはいられない。
如何しよう?
そう、右も左も見ても壮大な景色の渓谷で、ここが何処だか分からないのだ。
食べ物は、飲み物は、寝床はと色々と考えてしまう。
落ち着け...わたし‼
ふぅ~...と息を吐いて、気持ちを落ち着かせる。
先ずは、ウエストポーチの中身の確認から......???
まぁ、百歩譲って今迄使っていた物が入っているのは当たり前だけれども思考の中に入り込んでくる中身の情報量は桁違いだった。
うん、今はこれで納得しておこう。
その中でも重要だと思われる物がわたしの気持ちを昂らせた。
それは、わたしだけかも知れないが......魔法の書という物にとても気持ちが引かれたのだ。
もしかして、これでわたしも魔法少女‼
テンションが以上に上がる。
近くに人が居たら、ドン引きしていただろう。
傍にある大木に背中を預けて、わたしは魔法の書を取り出して開いてみる。
そして、最初のページを捲りそこに描かれていた魔法陣みたいな物を目にした時に先程と同じ様に桁違いの情報がわたしの中へと入り込んできた。
情報量の多さに目眩を覚えたが、少し休憩した後もポーチの中にある必要な書物を開いては情報の吸収を繰り返した。
わたしは、これがとても重要なことだと感じたからだった。
そして、全ての書物を取り込んだ時には空が茜色に染まっていた。
あ~、お腹が空いた。
ポーチの中から、たまごサンドと200ccパックの牛乳を取り出して空腹を満たす。
出た、ゴミはポーチの中あるゴミ箱の印に触れると自動的に処理してくれる仕様になっているみたいだ。
寝床は、ベッドとイメージするとあの座席のベッドが現れた。
消えてしまった訳ではないようだ。
そしてベッドに入り横になると、ガラスの天井も元の様に現れた。
イリュージョン‼
ここでも、テンションが高まる私だった。
ただ、お風呂は無かったので身体は、覚えたての魔法クリーンを使って綺麗にしておいた。
でも、いつかはお風呂に入りたい。
そう思いながら、この日は寝てしまったのだった。
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