男の娘、異世界を満喫する
あんドーナツ
第1話 ウエディングドレスに憧れて
わたしは、小さい頃から良く女の子に間違われていた。
5歳の頃だったか、隣に住むお姉さんが結婚するので、わたしのお母さんがわたしを連れてお姉さんのお家に遊びに行ったのだ。
丁度その日は衣装合わせをする日だったようで、わたしの目の前には純白の奇麗な衣装を身に纏ったお姉さんがにっこりと笑顔を見せて立っていた。
「きれい」
身体は男の子だったが、ふとそんな感情が湧き上がっていた。
その出来事がわたしの人生を決めた気がする。
小学校に入ると女の子のように髪の毛を伸ばしポニーテールにして通っていた。
男の子達には揶揄われたりしたが、普通には接してくれていた。
女の子達は好意的だったが、私達が引き立て役ねと愚痴を言っていた。
変化が起きたのは、中学校に進級してからだった。
小学校から一緒の友達は問題なかったが、他の小学校から進級してきた子供たちが問題だった。
そう、所謂いじめが始まったのだ。
同じ小学校の友達は庇ってくれていたのだが、それでも馬鹿は居るもので突っかかってくる輩は確かに居たのだ。
そして、わたしを庇ったせいで友達が怪我をしてしまったのだ。
それ以来、わたしは学校に行かなくなった。
小学校からの友達は気に掛けてくれて、夕方の下校時間に寄ってくれては授業の進み具合を教えてくれたりプリント等を届けてくれていた。
ただ、家での一人でする勉強には限界があって苦しくなると母に抱き着いて泣いていた。
そんなある日のこと、隣のお姉さんが訪ねてきた。
「大きくなったわね。あなたのお母さんから話は聞いたわ、私が勉強を見てあげるから高校受験が受けられるように頑張りましょう」
と言うと、隣のお姉さんは優しく抱きしめてくれた。
それから三年後、わたしは無事に高校入試を突破する事が出来た。
でも、入学はしないつもりだ。
たぶん、また、いじめにあってしまうと感じたから。
今のわたしは、髪をロングにして薄くお化粧をして女性物の服を着ているからだ。
身体は男のままだが、気持の問題なのか骨も細く体型は女性の様に華奢である。
つい先日は隣のお姉さんが、結婚式の時に着たウエディングドレスをホテルで試着させてあげると言って、わたしを家から連れ出した。
その時は恥ずかしかったが、ウエディングドレスを着てお化粧をして記念にと写真まで撮影してくれたのだが、そこに写った自分はとても嬉しそうに微笑んでいた。
写っているのは自分自身なのだが、ここまで自分の信念を曲げなかったのはやはり間違いではなかったと確信できた。
これまで支えてくれた母親と隣のお姉さんには感謝しかないな。
そして、小学校の時代から良くしてくれている友達たち。
一人でも傍に理解してくれる人が居る事は大切な事なのだと実感した。
人は其々に個性があって良いと思う。
人に迷惑を掛けるのでなければ、自分の生き方に自信を持って取り組むべきだ。
人に合わせた人生では無く、自分なりの人生を歩むべきだ。
結局、わたしは高校・大学と通信教育で全ての教育課程の資格を取得した。
そしてこの9月からは、自由の女神があるアメリカの大学に通う事になっている。
友達が一人でも多く出来ればいいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます