第72話 今後の方針


 投降したアルゼ艦隊の司令官と会談するため、マリアを伴いアギラカナに戻ったわけだが、その前に今後の方針について考えをまとめようと思い、いつものメンバーに作戦会議室に集まってもらって協議することにした。


 航宙軍のアマンダ中将、陸戦隊エリス少将、兵站部フローリス少将、探査部ドーラ少将の順に発言があった。


「探査機からの情報および今回のアルゼ艦隊構成艦から得られた情報から航宙軍としましては、アルゼ帝国のもつ航宙戦力撃破は極めて容易であると判断しています。現在、アルゼ帝国では航宙戦力を中心星系ハミラピラトラに集めている模様ですので、敵戦力の完全撃破には非常に好都合です。いずれにせよ、我々の艦隊が敵首都惑星に接近すれば迎撃せざるを得ませんからそれらを撃破し続ければ、敵の降伏も早まるでしょう」


「陸戦隊としましては、現在三個連隊の投入が可能です。航宙軍によるアルゼ帝国の航宙戦力の排除が前提ですが、三個連隊を全力投入した場合、アルゼ帝国首都惑星アーゼーン制圧に三日から五日必要と考えています。この制圧期間の幅は今後の情報収集で狭くなります」


「アマンダ中将、エリス少将。まだアルゼ帝国と戦争すると決まったわけではありませんから」


「これは、失礼しました」「失礼しました」


「いえ、戦闘を想定しておくことは大事なことですから」


「「ありがとうございます」」



「兵站部からは特に何もありません。戦略物資は反物質を含め備蓄は十分です。採掘船も順次竣工していますし一次資源の採集は順調です」


「探査部から、まず一点。先ごろゼノによって壊滅した星系の近傍の星系から飛び立ったと思われるゼノを捕捉するため監視用の探査機をすでにアギラカナより発進させています。アルゼ帝国でゼノ関連の内部情報を得たのがつい先日だったため探査機の発進が遅れました。当該星系から伸びる近傍星系までの経路上への探査機の配置完了は五日後の予定です。


 問題の今回壊滅した惑星シノー内に潜むゼノへの対応ですが、配置した探査機により観測されたゼノの総数は約五万、このゼノの集団はその質量分布からかなり疲弊しているようですので、惑星の金属資源を食べつくした場合、繁殖限界を超えてしまう可能性が有ります。予想される繁殖後の総数は、最も多く見積もった場合で前回同様の三百万程度まで、時間にして八年程度かけて増殖すると思われます。


 現在アギラカナが超空間航行可能になりましたので、艦隊による待ち伏せ作戦でなく、テストもかねてアギラカナの主砲により惑星を破壊し、繁殖中のゼノを惑星から追い出した後、艦隊およびアギラカナのゼノブラスターと対消滅弾により掃討することを提案します」


 五万が三百万になるにはそれなりの時間がかかりそうだ。ゼノが再び活動を始めるまでその期間を待機しているのもそれなりに大変だし、ゼノをすぐに撃破できるのならばそれに越したことはない。


「アギラカナの主砲で惑星を破壊可能なんですか?」


「可能です。惑星シノーは直径10000キロほどですので、主砲弾を4000キロ以上惑星内に貫徹させれば主砲の対消滅弾一発で惑星を破壊出来ます。主砲全六門を使った場合、惑星内部500キロまで砲弾が貫徹するだけで惑星を吹き飛ばすことが可能です」


「アギラカナの主砲用対消滅弾を斉射、すなわち六発発射しますと、備蓄反物質の30パーセントを消費します」


「それはまた相当量ですね」


「弾体そのものも主砲の13000キロの砲身長からすれば大きくありませんが、それでも直径600メートル、長さ30キロありますから。なお対消滅弾用主砲弾は現在の備蓄量は十二発のみです。必要ならすぐに増やせます」


「十二発もあれば十分でしょう。今思いついたんですが、転送装置で反物質を惑星の中心に送り込んでしまえば簡単じゃありませんか?」


「惑星内のしかるべき場所に密度の低い空間、いわゆる空洞があれば転送可能ですが、液状化している現状ではそういった空間は見つけられないと思います。したがって反物質を直接惑星内部へ転送することはまず不可能です」


「なるほど。理解しました。それでは、まず惑星シノーに潜むゼノをアギラカナの主砲で裸にしたのち、個別に撃破後、現在星間空間を移動中のゼノを捉え、これを速やかに撃破するということで行きましょう。アルゼ本国との交渉は、この後に控えているアルゼ艦隊の司令官との会談のあとですね。先方との交渉が不首尾に終わり我々の介入に不服があるようでも、ゼノの撃破は行いましょう」



 いつもの砲艦外交だけだと先方に対しインパクトがありすぎるし、先方がどのような反応をするか見当もつかない。アルゼ艦隊の司令官には気の毒なことだが、我々とアルゼ政府との橋渡しをしてもらおう。


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