第15話城塞都市防衛戦 その9

 世の中のすべては、神の定めたギフトによって左右される。 

 人々は、ギフトを授ける神、ギフエナ様に感謝して過ごすべし。

 神の代理人たる教皇の元、人は楽園を目指して、日々修行せよ。


 ギフトに関して、ギフエナ教は色々な物を所持していた。相手のギフトを調べる魔道具を、極秘に開発して、冒険ギルドに設置している。これは、許されない国際協定違反だが、冒険ギルドは、僕大な資金援助によって、これを黙認している。ギフトがわかることで、色々と獲られることが冒険ギルドも多い。お互いが、共犯者だった。

 その事を、ギール王国の第1王子は、疑って調べていた。

 それを利用して、ロセロアは、自分が不利になる魔道具を集めさせ処分した。

 ギフエナ教は、ロセロアのギフトの事を把握している。独裁者と言うギフトは、世界に混乱を呼び寄せるギフト。過去、有力者がそれを手にしたとき、色々と悲劇がおきていた。

 今回、表舞台にロセロアが出た事で、危険分子と断定。進行していたすべての作戦を中止して、ロセロア暗殺の指示が出た。

「進行中の作戦とは?」

「不可解なギフトを持つ人間を、攫う作戦だ・・・」

 初等学校に向かうと、なぜか冒険者が取り囲んでいました。誰かを探している感じがしたので、後方支援と思わしき人物を、こっそり殴り倒し、校舎の裏に引きずり込んで、拷問中です。強化の重ねがけをした私の力に、この冒険者は手も足も出せません。

「なら、何故初等学校を冒険者が包囲している?」

「建前は、子供達の保護」

「本音は?」

「この場所から、暗殺に向かっても間に合わないと言う判断を、俺達のリーダーが下した」

「暗殺は、成功するのか?」

「教団の暗部が向かっている、小娘1人で防げるはずが無い」

「子供を攫って、どこに行くつもりですか?」

「本国だ」

「この状況、魔物が集まったのはギフエナ教の仕業ですか?」

「最初のきっかけは、この国の王子だ。我々は、少し後押しをしただけだ」

 魔物の数が多すぎると思ったら、余計な介入をしていた存在があったのですね。

「この国の人間が、大勢死ぬ事になって、ギフエナ教は良いのか?」

「戦いこそ試練の場。ギフトに目覚めれば、魔物など恐れる事は無い」

「そのギフトが、都合が悪いと暗殺をするんだ・・・」

「悪しきギフトは、滅ぼされるべき」

「全てのギフトは、そっちの神様が授けるのでは?」

「そうだ」

「なら、悪しきギフトを何故授ける?」

「それも、試練。教皇様が、徳をつむための試練を、世界中に課しておられるのだ」

「貴方が、ここで死ぬのも、試練かな?」

「え?」

「お前たちが探しているギフトは、念導かな?」

「念導と、死の予言だ」

「もし、ついていかないと言った場合は?」

「無理矢理でも連れて行く」

「それは残念。行くのは嫌なので、あなた方には、ここで死んでもらいます」

「なっ、神の使途である我々を、殺すと言うのか?」

「敵対するなら、そうするしかないでしょ?狂信者は特に・・・」

 異世界は、怖いですね。なまじ神と呼べる存在がいる可能性があるから、怖いです。

 目の前の冒険者、目が狂っています。この国の王女が、独裁者と言うギフトを持っているそうですが、粉の宗教の教皇も、にた様なギフトを持っている可能性があります。

 こういう風に考えるのは、前世で色々な物語を読んだ影響でしょう。荒唐無稽の、とんでもない話も多数あります。

 生きのびて、幸せを掴むためには、力が必要と思っているのはその影響が強いでしょう。敵が宗教となると、流れる血が多くなる気がします。無駄な血は流したくない、平和が一番と言うのは、大切です。

「私が、念導のギフト所持者だと言った場合、貴方はどうします?」

「合流地点に連れて行くだけだ」

「残っている、初等学校の生徒は?」

「目的が達成したなら、無駄に血を流す事はしない。このまま、仲間が学校を警備するだけだ」

「死の予言のギフトは?」

「優先順位は低い。念導使いが見つかれば、それで良い」

「なら、私を連れて行きなさい」

「いいのか?」

「この都市の人間に手を出さないなら、それで良い」

「良いだろう」

 男は、懐から何かを取り出す。それを、地面に投げると、そこから煙が立ち昇った。

「何だ、外にいたのか?」

 次の瞬間、1人の男が現れます。力場の中で、一瞬で移動した気配がありました。移動ルートから考えて、瞬間移動が出来る人物みたいです。

「この子が、そうらしいです」

「どれどれ・・・」

 目に、魔道具をつけています。これで、ギフトが見られるのかもしれません。

「ぐぁ・・・」

 次の瞬間、その男が私の胸にナイフを突き刺しました。

「な、何をするんですか?」

 強化した肉体に、傷一つありませんが、刺されたふりをします。

「作戦変更。暗殺部隊が失敗した。ここから引き上げるぞ」

「あいつらが、失敗した?」

「お前も、色々と喋りすぎだ」

 瞬間移動してきた男は、冒険者にナイフを向ける。

「ん?」

 その時、ナイフに血がついていないことに気づく。

「魔道具は、こっちでしたか」

 男の懐にあった物を引き寄せる。スマホみたいな、板状の魔道具です。鑑定結果によると、情報を集めるための端末みたいです。私達の会話を、盗み聞いていたのでしょう。

「暗殺が失敗しても、私を殺す理由になりませんよね?」

「俺達が、ここにいた事を知られるのは不味い。他のメンバーは引き上げた。この学校を守っていのは、普通の冒険者だ」

「大人しく、突いていくつもりでしたが、殺そうとされたのです、あなた方は敵ですよね?」

「っち」

 私が睨んだ瞬間、瞬間移動した男が消える。

「貴方も、運が悪かったです」

「何が?」

「目撃者は消す。基本ですよね?」

「何の基本・・・」

 それ以降の言葉を、彼は言えなかった。つまりは、そう言うことです。

 瞬間移動した男は、永遠に行方不明になっているはずです。消える直前に、念を込めた小石が、頭に直撃しています。目的地に出現できたかは、わかりません。

 単純に、魔物との戦いだけと思っていましたが、いろいろと動いていた存在がいたみたいです。

 とても、面倒です。守備隊の本拠地が消えたことで、街に混乱が生まれました。運よく、初等学校は何も知らない冒険者が守っています。

 盾に乗って、空に上ります。上から見渡すと、火災の起きている場所もあります。魔物は、城門から離れた場所にいるので、しばらくは安全でしょう。ただ、生き残った兵隊は、王都へ向かうみたいです。

 城門が開き、馬車が何台も走って行きます。それを、徒歩で追いかける集団も確認できました。

 準備が早いというか、大丈夫か不安になるレベルです。

 沢山の人が移動したことで、魔物達がこちらに気づいたみたいです。ゆっくりと、街に向かって移動を開始しました。500くらいのそれなりの規模の群です。

 さて、リリの望みを叶えるために、このまま王都に向かうべきか、防衛に参加すべきか悩みます。

 残っている戦力は、多くありません。レーヤの結界があればあの2人は大丈夫でしょう。

「考えていても、答えは最初から決まっていましたね・・・」

 盾を移動させましょう。

 魔物を殲滅します。

 王都に向かうのは、その後です。

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