第13話城塞都市防衛戦 その7

「えっと、何があったのでしょうか?」

 壁に映し出されていた映像を見て、レーヤが呟く。王都の様子を、リリが魔法で監視していた。

 ここは、城塞都市にあった地下室。昔存在した犯罪ギルドの隠れ家だと思う。

 レーヤを匿うにあたり、見つけた場所だった。

 城塞都市に戻った後、リリと相談して匿うことにしたのだった。

 

 レーヤ 15歳 妖精族

 体力 D

 魔力 B

 基礎 C

 幸運 A

 ギフト 荷物もち レベル4

 空間収納 レベル4

 防御結界 レベル4

 ネット通販 レベル1

 乗り物召還 レベル1

 

 優れた能力を持っていた。幸運がAと言うのは、現状今までの生い立ちから想像できない。

 生まれてすぐに、妖精族の村から追放されたらしい。ギフトが、妖精族に危険な物と判断されたからだと言っていた。その後、孤児院で育てられ、10歳で城塞都市の初等学校へ入学。

 荷物持ちと言うギフトは、結構ありふれた物で、軍部の補給部隊で常に必要とされていた。

 そこそこの成績で初等が香を卒業。以後軍隊で補給部隊に所属。色々とな場所へ派遣されていた、

 彼女の空間収納は、容量が大きく、時間経過はあるが、それなりに重宝されていた。

 ネット通販と、乗り物召喚と言う謎のスキルを手にしてが、使えなくて今にいたる。

 防御結界は、何度も命と純潔を守ってくれたと彼女は言う。

 ネット通販は、私が欲しい思っていた能力の一つだけど、残念ながら彼女しか使えない。

 レーヤの場合、画面の文字が読めなくて、使えない。乗り物召喚も、使えない鉄の塊を召喚するだけで、役に立たないと言っている。これは、ある程度予想がつくので、後日試す予定だったが、空間収納の物資の確認に追われて、実現していない。

 レーヤの空間収納、適当に入れすぎて、色々とおかしくなっていた。なぜか大量の金貨があったり、魔道具も結構ある。盗賊を退治に連れて行かれ、その時に見つけたものを預かったけど、そのままになっていたと言う。要請で、各地に派遣されて、1年間彷徨い続けていたらしい。先日の任務が終わったら、物資を返還してまとまった休暇と、昇進が決まっていたらしい。それが駄目になったので、彼女の運がAと言うのに疑問が残る。

「一つ、お願いしてもいいかな?」

 リリが、こちらを見てそう言う。

「私にですか?」

「はい。助けて欲しい存在があります」

「王都に、知り合いが?」

「先程、映像に知った存在がいました」

 存在と言う事は、人ではないと思います。この子も、色々と謎があるので、魔物に知り合い相手も不思議ではありません。

「私に、できるでしょうか?」

「わからない。でも、お願いしたい」

 この隠れ家に、自分の部屋を作り、彼女は入り浸っています。怠け者と言うか、やる気のない雰囲気で、毎日世界の様子を見るのが趣味と言っていました。そんな彼女のお願いです、できれば、叶えてあげたいです。

「でも、王都は危険じゃないですか?ここにいれば、安全ですよ?」

「ここも、もうすぐ戦場になる」

「そうなんですか?」

「死の気配が高まっている」

「こ、怖いこと言わないでくださいよ」

「事実」

「守備隊は、守りを固めているんですよね?」

 だから、ここが戦場になる可能性は低いと思います。でも、彼女が死の気配を感じるとなると、話は別です。何か、よくない事が起きるのかもしれません。


「各都市の全部隊に告げます」


 都市の上空に、声が響きます。凛とした、女性の声。

「私は、ギール王国の王女ロセロア。現時点を持って、全軍の指揮権を国王陛下より賜りました」

 美しい女性の姿が、空中に浮かびます。

「王都は、現在危機に瀕しています。全ての軍人は、速やかにこれを救うべく行動してください」

 これを聞いて、防衛を考えていた首脳部は苦い顔をする。救援に行くには、都市を見捨てないといけない。魔物は、まだ周辺にいるのだった。敵は魔物だけではない。軍隊が全部移動すれば、闇ギルドや、盗賊が暴れる可能性もある。補給の関係で、簡単に動けないと言う理由もある。

「従わない場合は、処刑します。全ての軍人は、速やかに王都の救援を開始しなさい」

 それだけ言うと、彼女の姿は消える。魔物の多さから、彼女は混乱していた。現場も、混乱しているので、あのような下作が行われてしまった。

 王族が処刑すると言って以上、従わなければいけない。もしくは、国と戦う道もある。怖いのは、彼女のギフトだった。独裁者と言うギフト。彼女の命令には、それなりの強制力が発生する。

 スキルにも問題がる。今はレベルが低いから、それなりだけど、レベルが高くなれば、誰も彼女に意見できなくなる可能性もある。

「さて、どうすれば良いのでしょうね・・・」

 王都に向かうとなると、移動する軍隊が邪魔になる。

「あの様子から、すぐに死ぬ子じゃないと思うの。まずは、足場を固めましょう」

「足場?」

「この都市の地下に、面白い物があります」

「やっぱり、なにかっあったのですね」

 念の訓練で、力場で色々と調査した時、地下に何かあるのを感じました。ですが、弾かれてしまい、確認できていません。小さな船みたいな感じがします。

「大昔の、魔導船です。私の私物なので、取り戻しましょう」

「私のって、リリ様のものなら、自動で呼び寄せるとか出来るのでは?」

 レーヤは、リリの前世が殺戮の魔女と言うことを理解していた。最初は、聞いても信じず、色々と惨い思いを体験している。その結果、リリ様と呼ぶ様になっていた。

「あのころの私は、今みたいなものぐさではなく、歩けるなら自分の足でが、モットーでしたの」

「地下にあるのは、知っていたのですか?」

「あれがあるから、私はこの城塞都市に来た見たいですの。記憶が戻る前から、そうなるように、仕組まれていたみたいです」

「誰に?」

「前世の私かな?何かあったと気のための、安全装置みたいなものね」

「これだから、異世界は怖いな・・・」

 色々と、何でもありの世界なので、納得する。

「どこに行けば、その船までいけるんだ?」

「街の中央、領主の館の周辺だと思います」

「今なら、手薄か?」

「部隊が、動いてからのが良いでしょう。無駄に死ぬ人も減りますよ」

「了解。それまでに、レーヤのこと、色々と試してみようかな?」

「それが良いですの」

 リリと2人で、にやりと笑う。乗り物召喚とか、まだ試していない事がある。

「ちょっと、待ってください。スティッ君、リリ様」

 不穏な空気を感じて、レーヤが叫ぶ。

「「待たない」」

「そんなぁぁぁあ!」

 絶望に打ちひしがれるリーヤ。私は、そんな酷い事をした記憶はありませんがここまで怖がられるのは心外です。リリのやったことがトラウマになっているのかもしれません。是非、教えてもらいましょう。

 

 城塞都市ファイエルが、崩壊する直前の出来事でした。

 この後、人は人と殺しあう。だから、異世界は怖いのです。

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