第11話城塞都市防衛戦 その5

 妖精族と名乗ったレーヤを観察さする。15歳と言ったけど、今の私よりも年下に見えます。リリよりも幼い感じです。

 妖精族は、成長の遅い種族と聞いているのいで、仕方ないかもしれません。ただ、こんな子を襲うとするなんて、ここで死んでいた兵士は、変態ばかりだったみたいです。

「生き残りは、貴方だけですか?」

「そうみたいです・・・」

「王子の護衛任務で良いのでしょうか?」

「えーと、私は、詳しい任務は聞いていません」

「とりあえず、どうします?」

「え?」

「国に戻って、報告しますか?」

「・・・」

「王子を守れなかった責任、追及されますよね?」

「だ、っだってあの人たち、王子が死んだ瞬間、もうだめだって、結界の中は安全だけど、どうせ死ぬなら最後にって・・・」

 それで、襲って結界からはじき出されたのだろう。

「王子は、1人で魔物に挑んでいきました。第3王子の思惑を壊すって・・・」

「その辺は、聞きたくないです。私には、関係ありません」

「むぅ」

「輸送部隊と言う事は、物資を持っていますか?」

「私は荷物持ちのギフトがあります。空間倉庫の容量が多いから、色々と詰め込まされているのです」

 なぜか誇らしげに、無い胸をはるレーヤ。服がボロボロなので、見えそうで見えない部分がある。

「ふむ・・・」

 なぜか、彼女から気になる波動がある。先程、念話のために念を飛ばしたけど、何かおかしい。

「てい!」

 彼女の着ているものを念で包む。先程手に入れた鑑定を使ってみても、特別な物はない。

「少し、申し訳ありませんが、確認させてもらいます、分解!」

 彼女の身に付けている物を、念じて分解する。流石に、分子レベルに分解は出来ませんが、糸が崩れ、接合分がはがれ、その全てが崩れ落ちる。

「ちょ、ちょっと、何をするのですかっ!!」

「ふむ・・・」

「ふむじゃないですっ!結界発動!!」

 不快な違和感は、彼女からまだ残っていた。丸裸にしたけど、どこかに違和感を感じた。大量の補給物資を持っている彼女を、何もせずに放置するとは思えない。

「こ、この結界は龍のブレスも防ぐ、凄い結界です。私に何かあれば、救援隊が来ます、多分。覚悟して置いて下さい。乙女を、丸裸にするなんて、万死に値します!」

 確かに、この結界は凄いと思う。

「これ、中の人に被害は及びませんか?」

「攻撃は、結界が吸収するのです。万が一でも、威力が上でも、一度は防いでくれるのです」

 律儀に、応えてくれるのはありがたい。私自身の強化を、最大限まで重ねがけします。

「これやると、反動があるから嫌なんですよね・・・」

 完全に使いこなせていないので、できれば無理はしたくありません。

「せい!」

 結界を、殴りつけます。触れた瞬間、弾かれそうになりましたが、押し込む事で、結界は粉々に砕けて消えました。

「嘘・・・」

 その光景を見て、レーヤは呆然としています。

「龍のブレスよりも、強いの?」

 そして、震えだします。一部、乙女の尊厳が失われていますが、見なかったことにします。

「動かないでくださいね・・・」

 そう言って、念で彼女を包みます。心臓の側に、何かあります。慎重に、その物体を念で包みます。

「呪いの楔?」

 鑑定の結果、呪いの楔と言う魔道具が、レーヤの心臓に突き刺さっていました。特殊な、呪いで相手の位置を把握して、命令する事で爆発する魔道具です。

「心当たりは?」

 こんな物騒な物を埋め込まれているとは、彼女は物凄い悪人かもしれません。

「そんなの、知らない。何で、私が?私が、何かしたの?」

 設営すると、彼女は号泣してしまいました。

「後、10秒で爆発ですか・・・」

 運の悪い事に、爆発するように命令が出されています。

「ごめんね、私のせいで巻き込んだのよね?」

 泣いていた彼女は、私の呟きを聞いて、悲しく笑いました。

「こんな貧相な体でも、最後に良いものを見てよかたったよね?」

「良くはありませんね」

 どうやら、恐怖で混乱しているだけでした。

「分解」

 念で、その魔道具を分解します。

「空間倉庫に、空きはありますか?」

「え、なんで、ええっと、ありますよ?」

「だったら、これをしまってください」

 先程集めた物資を示します。魔剣とか、宝石、壊れた鎧などが山積みです。

「はい」

 彼女が、意識しただけで、それらが消えます。

「こちらに、来てください」

 言われるまま、私の側にやってきます。

「浮上!」

 盾の上に2人で乗り、空に浮かびます。

「再生!」

 先程分解した、呪いの楔を、再生します。先程まで、彼女が立っていた場所に、それは出現しました。

 特殊な魔道具だからできる事です。そして、次の瞬間それは大爆発を起こしました。

「えげつないですね・・・」

 真下から襲い掛かる爆風は、かなりの物でした。これだから、異世界は怖いのです。体内に魔道具を埋め込むなんて、恐ろしい事をする人がいる。

「・・・」

 レーヤは、真っ青な顔で下を見ています。仮に、王子が生きていた場合、死んでいたでしょう。彼女は、利用されたのでしょう。

「これから、どうします?」

「これって、私は死んだ事になるのかな?」

「おそらく、なるでしょう・・・」

「今まで、国のために頑張ってきたのに、酷いよね?」

「やっぱり、この国から出たほうがよさそうですね」

「ついていって良いですか?」

「どうして?」

「貴方、空飛べるし、龍のブレス防ぐ結界壊せるほど強いし、乙女の裸を見ても態度変えないし、色々と醜態されして、恥ずかしいもいさsれらたし、いつまで、私裸なんですか、何か着る物、せめて何か体を隠すものをお願いします!」

 最初は、声が小さかったけど、徐々に叫び声に近くなった。最後は叫んでいる。

「わかったら。狭い所で暴れないでください」

 と言いつつも、結局城塞都市に戻るまで、そのままでした。手で照れながら体を隠すしぐさが可愛かったので、ついそのままにしてしまいました。

 流石に、他の人に見られたくはないので、城塞都市の近くで、拾ったマントを貸してあげました。

「うがーーーー」

 体を隠しながら、こちらを威嚇しています。中々、面白い人です。

「守りを固める事にしたようですね・・・」

 魔物大群が、城塞都市の側を移動しています。都市の防衛隊は、街を守るようにと、領主に命令されました。司令官は、それなりに有能だったみたいです。情報を集め、手を出さなければ、攻撃されないと言う考えになりました。守りを固め、通り過ぎるのを待つことにしたみたいです。

 そう言う命令が、街の至る所に指示されています。魔道具と言う物は、便利です。

「大丈夫なの?」

 魔物の群を見て、レーヤは不安そうな顔をしています。

「生き残るだけなら、あれくらいの魔物で死ぬつもりはありませんよ」

「でも・・・」

「面白い物を色々と見せてもらったので、報酬分は守って見せます」

「うがーーー!!」

 自分の醜態を思い出し、レーヤは叫ぶ。恥ずかしい気持ちと共に、守ると言われて嬉しかったと、後に仲間に語るのだった。

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