第4話念導使い その4
「これが、迷宮・・・」
今日は学校の実習で、迷宮に来ている。
この世界は、魔物で溢れている。魔力溜りという現象があり、そこから魔物は生まれる。
それに対抗するために、神は人にギフトを与えていると言う。
その真偽は不明だが、神の存在を、今のところ見た事は無い。転生時に神様と会話をした記憶は無い。思い出せないだけかもしれないけど、それらしい種族にあったこともない。
人間以外に精霊族、エルフなどの亜人はいる。どこかに、神様がいるかもしれないけど、今は関係ない。
「子供が行くべき所じゃないだろう・・・」
本来なら、冒険者と言う最低の存在が付き添う予定だった。
彼らは、途中で逃げ出した。
迷宮の罠が発動して、魔物が溢れたからだ。口だけは立派だったけど、いざとなったら役にたたない。
過去に村に来た冒険者がそうだった。村の宝の宝剣を盗み、村の壊滅に追い込んだ人もいる。
私たち5組の担当の冒険者は、Cランクの冒険者と言っていた。全部で5人いたけど、3人がまっさきに逃げ出して2人が死んだ。
私たちを守るために死んだのなら、その評価を見直すけど、この2人が罠を発動させ、魔物を呼びよせた。そして、あっという間に飲み込まれて死んだ。ゴブリンと言う、人に似た小型のモンスター。1メートルくらいの身長は、大人なら小さく感じるかもしれないけど、私たちからすれば充分脅威だ。
そして、大人の冒険者をあっという間に殺せるだけの数がいる。
「逃げるんだ!」
誰かが叫んだ。それを聞いて、全員が動き出す。
迷宮の入り口まで、ここからまだ距離がる。地下2階の最初の広間にこんな罠があるとは、誰も思っていなかった。
迷宮は、常に変化すると授業で習っていたのに、迂闊だった。
「大丈夫?」
「速く走れ!」
グリーンが声をかけてきたけど、こちらも余裕は無い。速く逃げろと指示を出す。
今回、3人でパーティを組んでいる。俺とグリーンとリリだった。
「リリも、速く!」
「・・・」
おびえで、動けない彼女を強引に抱え込む。俺もそんなに力があるわけじゃないので、この状態で走るのは難しい。
他のみんなとの距離が出来る。
「グリーンは、先にいけ」
「そんな事、出来ないよ」
「逃げるくらいなら、俺がやる!」
そう言って、誰かが逆走してきた。
「うららららぁぁ!」
向かってくるゴブリンを、次々と殴り続ける男がいる。その一撃で、ゴブリンは簡単に爆散した。
「ガイル?」
「少しは時間を稼ぐ、速く行け!」
「すまない」
彼は、戦闘技術も高い。次々と、ゴブリンを倒していく。
「大丈夫?」
「あ、ありがとう」
階段までたどり着き、抱えていたリリを降ろす。彼女も、少しは落ち着いたみたいだ。
「上に速く」
「スティック君は?」
「ガイルを援護する」
「大丈夫なの?」
「簡単な、罠を作るだけだよ」
そう言って、服を少し破く。
「??」
何をしているか、リリは不思議そうな顔でこちらを見る。
「速く、逃げて」
「は、はい」
私に促され、リリは階段を上がっていく。
「ガイル、こっちに!」
「解った」
みんなが逃げた事を伝えると、彼は駆け寄ってくる。
「お前は、大丈夫なのか?」
「簡単な罠を作った。距離が必要だから、もう少しここにいる」
「そうか、なら俺もいよう」
「いいのか?」
「ここのが安全だと思うからな」
そう言って、にやりと笑う。教室では一匹狼かと思ったけど、この男かなりのカリスマがある。
「念導!」
声を出す必要は無いけど、ガイルに教えるために、ギフトの名前を声に出す。
「何か、したのか?」
「私の、後ろにいてください」
「それは、あまり好きじゃなんだがな・・・」
「下手に動くと、ああなりますよ」
「えぉ?」
それを見て、ガイルが変な声を出す。
こちらに向かってきたゴブリンが、直前で分断された。勢い良くこちらに向かっていたゴブリンが、次々とづ分断される。死体の山が出来てきたので、少し下がる。迷宮で死んだものは、装備を残して迷宮に吸収される。装備もしばらくすると吸収され、宝箱の中身なるという不思議なシステムが存在している。
ただ、死体もすぐには消えない。
「飛び道具を持っていなくて、助かった・・・」
相手は、近距離の攻撃しか手段が無かった。魔法を使うゴブリンもいるらしいので、ここにいないのは助かった。
「それが、お前の力か?」
「使い方、次第のですけどね」
やって来るゴブリンが、次々と倒れていく。ここまでは上手く行っているけど、油断は出来ない。
「あれだけの数なら、俺がやれるけど?」
「頼んでいいですか?」
「任せろ」
残りの数が、10匹になったころ、ガイルが提案してきた。
「念導!」
「おりゃぁぁ!」
俺が何かをしたのを確認して、ガイルが飛び出す。
「こっちも、回収しておくか・・・」
ゴブリンの死体から、アイテムを回収する。ナイフや、盾、薬草を持っているゴブリンもいた。
ちなみに、魔石というのを魔物は体内に持っている。これだけは、ダンジョンに吸収されないので、後から回収しても間に合う。
「こっちは終ったぞ」
「流石です」
「これくらい、大した事ない」
「それは?」
「最初に死んだ冒険者の物だろう。ほら」
そう言って、小型の鞄をこちらに投げてきます。
「良いのですか?」
「迷宮の中で発見したのは、その人物の物になる。俺もひとつここにある」
そう言って、小さな鞄をこちらに見せる。これは、アイテムバックと言う小型の魔道具だ。
比較的高価な物だけど、Cランクの冒険者なら持っていても不思議ではない。
「後で、面倒な事になりませんか?」
「既に、なっているよっと!」
ガイルが、隠し持っていたナイフを投げる。
「ぐぎゃぁぁ」
その直後、背後にいた人物はそれを首筋に受けて死亡する。
「ガイルって、どこかで戦闘訓練していたの?」
初等学校の生徒では、説明できないスキルが彼にはある。
「傭兵団の出身なんだ、俺は」
「なるほど」
冒険者とは違う、魔物専門で戦う集団。冒険者は何でも屋だけど、傭兵団は戦闘特化の恐ろしい集団と思われている。
「で、これは?」
「先に逃げたと思った3人の1人だな」
「ここに、隠れていたのか・・・」
逃げ切れないと思い、壁の前にギフトで壁を作り、身を守っていたみたいだ。アイテムバックを見て、奪い返そうと思ったのだろう。
「どうする?」
「こいつらの違反は、全員が見ているんだ。大丈夫だろう」
「それは、目撃者がいればだな」
私達以外の声。
「君達も、すぐにクラスメイトの所に、送ってあげるよ」
そう言いながら、2人の冒険者が階段を下りてくる。その言葉の意味を考え、私は血の気がうせた気分です。
「他のみんなは?」
「今から死ぬ人に、教える必要は無い」
男の手に、光が集まる。
「死ぬがいい!」
その魔法が発動する直前、ナイフが男の頭に後ろから突き刺さる。一緒にいた男にも、同時に刺さる。
「ぐぁぇ」
そして、そのまま2人は絶命する。ギリギリだったけど、何とかこの場は生きのびられた。
上が気になるので、ガイルと一緒に、急いで向かうのだった。
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