第2話念導使い その2

 初等学校に入学して、1週間が過ました。

 クラスメイトとも、それなりに馴染んだ。この学年は全部で5クラスある。

 1クラス平均20人ぐらい。全部で100人より少し上と言う感じだった。

 子供の数が少ない気がしたけど、どうやら全ての子供が集まっているわけではないみたいだった。

 元々、城塞都市の子供は、都市の学校にもっと幼いころから通っていた。

 辺境の村の子供の死亡率が高いので、ある程度成長するのを待ってから集めているらしい。

 ギフトの覚醒前の子供は、死亡しやすいので、移動させるだけでも大変だと言う。

 ギフト覚醒前後だと、不思議と死亡率が低下するらしい。ギフトを、神の加護という人たちは、この辺に奇跡を感じているらしい。

 ともかく、5クラスの内、私が配属されたのは5組だった。1から順に、強さやギフトを考慮した編成になっている。

 5組は、ギフトが謎、もしくは弱いと判断された集団だった。

「おはようございます」

「おはよう」

 隣の席に座っている少年、グリーンのギフトは回復。

 これだけなら、物凄く有益で、このクラスにいるはずが無い存在だ。だが、彼のギフトは今まで発動した事がない。

 スキルは、回復と、ギフトと同じ名前。今まで、色々と、死体に試すと言うこともしても、発動していない。

 この手の話は結構あるみたいだった。何かが足りなくて発動しない。発動するための条件を満たしていない。それを探るために、彼は色々と努力している。

「そっちの調子は?」

「こっちも、相変わらずだよ」

 そう言って、私は一つのナイフを浮かび上がらせる。その動きはゆっくりとしたものだった。

 1キロ以内のもを移動させると言う私のスキル。それを使って、攻撃できると思ったけど、移動速度が遅く、攻撃には不向きだった。どれだけイメージしても、ゆっくりとしか動かない。それでも、常時発動させている。使っていれば、やがてスキルレベルが上昇する。

「魔力は大丈夫?」

「大丈夫、これの発動にはあまり魔力を使わないんだ」

「それは、便利だね」

 これに関しては、嘘だった。あまり使わないのではなく、まったく使わない。

 念導力に関しては、魔力無しで発動できる。

 一般的な魔法は、魔力を消費する。ギフトが宿れば、生活魔法というものを習得できるようになる。

 これは、ここに来て知ったことで、一般教養と言うのは、生活魔法を覚える事だった。

 火をつける、水をだす、周囲を探索すると言う、基本的な魔法。

 基本的な事を理解すれば、3年でほとんど習得できるらしい。

 2回ほど授業を受けたけど、まだひとつもマスターできていない。グリーンは、既に火をつける魔法をマスターしている。聞けば、魔力の値はBらしい。

 それだけに、回復が発動しない事に、周囲は残念だと思っている。

「お、おはようございます」

 物凄く、小さな声で挨拶された。

「あぁ。おはよう」

 彼女は、小柄なクラスメイトで、リリと言う。彼女のギフトは死の予言。

 物凄く物騒な名前のギフトだ。スキルは寿命鑑定。相手の残りの寿命がわかるというもの。レベル1だと、1000年先の時点での生存がわかるらしい。

 彼女のスキルで見ると、クラス全員1000年後には死んでいると言う結果になる。

 レベルが上がると、その期間が短くなる可能性がある。その結果が怖いので、彼女はギフトのレベルを上げるのが怖いといっている。

 その先に、どんなスキルがあるのかも解らない。だから、ギフトを嫌っている感じもする。ギフトを至上主義としている連中もいるので、彼女の存在は色々と危ない。

「役立たずが、固まって仲良しごっこか?」

 クラスでも、俺たち3人はそう言う認識だった。他のクラスメイトは、それなりに使えるギフトを持っている、その力が弱いだけで、したのクラスに配属されたと言う認識が、彼等の性格をゆがめている気がする。

「次の授業、生き残れるといいですね」

「迷宮探索、毎年何人か死んでるからな」

「今年最初の死者にならないでくれよ」

「いくらなんでも、初回で死ぬやつなんていないよ」

 そう言って、彼らは笑う。

 剣術、槍術、盾術と言う、基本的な能力の3人。それなりに強いので、リーダー気取りでこのクラスを仕切っている。

「そう言うやつほど、最初に死ぬんだよな・・・」

 教室の片隅で、ぼそりと呟いた人がいる。

「なんだ・・・と」

 勢い良く、文句を言おうとして、相手を見て、それを止める。

「死にたく無いなら、これ以上俺の気分を害するな」

 その子は、それだけ言うと1人の世界に没頭する。彼の名前はガイル。スキル怪力の持ち主だ。

 その力は、一撃で教室の壁を破壊した。木製とは言え、子供の出せる力ではない。恐ろしい事に、彼の体に影響は無い。彼のギフトのレベルは2。ギフトと同じスキル、怪力のほかに、堅固と言う2つのスキルを既に持っている。

 防衛のために、ギフトがレベル2から発現する子も結構多い。彼の場合、有望だけど協調性に欠け、1週間目で1クラスから5組に編入された。有望な子供を1人、半殺しにしたという噂もある。

 だから、誰も近寄らない。

 子供が、力を得たら天狗になる。前世の記憶が薄っすらとあるので、その辺の気持ちは解るつもりだ。

 そう言う子供が多かったのだろう。力に関する教育は、結構シビアに行われている気がする。

 魔物がいて、命の価値が低い世界だと思う。こんな子供でも、迷宮に送り込んで実戦を経験させている。

 それで死んでも、仕方ないと言う風潮がある。

 勿論私は、ここで死ぬつもりは無い。ただ、今のままでは不安しかない。

「もっと色々と、試してみるしかないですね・・・」

 ふよふよと、浮かぶだけのナイフを見ながら、力の使い道を考えるのだった。


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