第12話 歴史的に重要な伝統文化です
「ところで、今日広場で裁判みたいなのがあってたんですが、あれ何なんですか?」
「見に行ったのか。低俗な奴め」
いや、行ったらたまたまやってたんだってば。
「まぁ、市民のガス抜きだな。大昔は国に損害を与えた奴を公開処刑していたんだ。だが残酷すぎるという声が上がってきてな。今は国政に関わる奴が悪さをしたり失敗したりした時の罰が行われる場所になっている。市民の
なるほど、平和的な解決方法だこと。
「もっとも、本当に死刑になるような罪を犯したものはちゃんとした場所で裁かれる。あそこで死刑が行われることはない」
「今日は15歳くらいの女の子が処罰されてたんですけど、あの子も国政にかかわってるんですか?」
「あぁ、ミミットか。まぁな。あれは城お抱えの魔術師だ。歳は若いが天才だ。たしか、勇者召喚の儀に失敗したとかだったはずだ」
「勇者召喚、ですか」
「魔王討伐の為にな。どの国も
「それが勇者召喚の儀ですか。そんなことできるんですか?」
「大昔に成功した事があると伝承は残されている。
「へー。勇者ってどんな奴何ですかねぇ」
見てみたいものだ。
「言い伝えによると、私たちでは到底及ばない力を持ち、あらゆる魔法を使いこなす、凛々しく聡明なお方だそうだ。髪も瞳も
「俺は茶髪だから違いますね」
「お前みたいな間抜け面の阿呆が勇者であってたまるか。バカも休み休み言え、疲れる」
ひっでぇ!
シャワー浴びて美人お姉さまになったのに言葉はより辛辣になってない!?
しかし、黒髪かー。大学にはいっぱいいたけどなぁ。
「私からも質問していいか?」
ワインをくいっと飲み干してフィロさんは言う。
すかさずおかわりを注ぐ。
「はぁ、構いませんけど」
「お前は何者なんだ?」
「何者って言われてましても……」
気がついたら森にいて流されるままになってたら奴隷になりました、としか言いようがないなぁ。
「訳のわからん言葉を話していたと思ったら急に言葉が通じるようになる。剣に怯えすぐへりくだるくせに、かと思えば
「いやー。正直自分でも何がなんだか。とりあえず山で何とか生き延びていたときと比べればどうということはないので……」
「そこも意味がわからないんだがな」
言いつつグラスを呷る。
すかさず注ぐ。
いい飲みっぷりだこと。
「とりあえず、寝る場所と食べるものがあるから満足してますよ、俺は」
「へんなやつら」
「俺からも質問いいですか?」
「なんだ?」
「何で嘘を言って無いって分かるんですか? 急にしゃべれるようになったとか、普通信じられないと思うんですが」
「私のスキルだ」
へー。スキルって一般的なものなのかな。
「スキルってみんな持っているものなんですか?」
「人によるとしか言いようがないな。何も努力していない物は使えない。剣の腕を
なるほどねぇ。
「じゃあもう一個質問」
「まて、次は私の番だ」
ターン性なのね。
「お前はスキルを持っているか? もっているならそれは何だ?」
「持ってますよ。4つほど」
俺の答えにフィロさんは少し驚く。
「ほぅ……4つもか」
「はい。ひとつ目がスキルを3つ持てるスキルで……2つ目が」
「まて」
何さ。いま説明中なんだけど。
「スキルを3つ持てるスキルだと?」
「はい。もともと1つしか持てなかったんですが、このスキルでさらに3つ持てるようになりました。だからスキルは4つです」
「訳がわからん」
「俺もわかりませんよ。2つ目がホーミーが使いこなせるスキルで、3つ目が」
「まて」
もー、何なの? 話の腰を折らないでほしいんだけど。
「ホーミーとやらは、あの変な民謡のことだったか?」
「そうですよ」
「そんなくだらないスキルを……阿呆はいるものだな」
くだらなくないですぅ。歴史的に重要な伝統文化ですぅ。
「3つ目はこの国の言葉をしゃべれるようになるスキルで、4つ目が」
「まて」
もう! なんなのよ! 話の腰を折る男は嫌われるわよ!
「そんなスキルがあるのか?」
「あるからしゃべれるようになったんですよ。そして4つ目。これが需要なスキルなんですが……」
「う、うむ」
「毎日1つ、何かしらのスキルを得ることができるスキル。他の人には内緒ですよ?」
「何? そんなもの聞いたことがないぞ」
俺だってなかったよ。
「しかし……なるほど、にわかには信じがたいが、急にしゃべれるようになったのは
嘘は言っていない。
スキルガチャも特別枠だけどスキルの1つだし、4つ程っていったから5つ持ってても嘘じゃない。
透視能力は黙っておこう。切られそうだから。
(シースルー)
ふへへへへ、フィロさんは今日は白色でございますか。何がとは言わないけど。
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