第6話 どうせ下半身はお粗末様なんだろう?

 牢屋生活四日目の朝。四日目ですよ? 四日目。

 その間、イケメン騎士に飯をもらって、わけわからん言葉で詰問きつもんされて。

 誰もいないときにガチャをして寝るというだけの生活をしていた。

 ありがたいことに体をくための水とタオルはもらえたので、衛生面えいせいめんも問題なしだ。

 ちなみに、一昨日、昨日と取得したスキルは、

・Fランクスキル:ウェザーシーイング(明日の天気が分かる能力)

・Fランクスキル:ホーミーマスター(ホーミーが自在にできる能力)

の二つだ。

 これで今現在のスキルは以下の四つとなった。

・スキルホルダー(小)

・スパーク

・ウェザーシーイング

・ホーミーマスター


 ウェザーシーイングは地味に便利そうだけど、牢屋にいる今は全然必要ない。

 ホーミーマスターは……うん。暇つぶしにはなるよね。うん。

 たしかモンゴルの民謡で、ウィーって低い声を出しながらファーっていう高い音も一緒に出だせるっていう摩訶不思議まかふしぎな歌い方だ。

 暇つぶしに最適で、昨日ずっとウィーウィー歌ってたら、イケメン騎士に心配された。

 頭がおかしくなったのかと思われたんだろうな。


 さて、持てるスキルは4つ。今持ってるスキルも4つ。

 つまり、今日のガチャで新たな検証ができるわけだ。

 4つスキルを持った状態でガチャを行うと、スキルはどうなるのか。


 考えられるパターンは4つ。

1、一番古いスキルが上書きされる。

2、一番新しいスキルが上書きされる。

3、上書きできるスキルを選択できる。

4、ランダムでスキルが上書きされる。


 3番であってほしい。

 悩んでも仕方がないか。

 それじゃあ本日のガチャ、気合を入れていきますか。


「むむむむむむ、ガチャァ!」


『上書きするスキル、を選択してください』


 お。なるほど。上書きするスキルが選択できるわけね。

 これはラッキーだ。

 必要なスキルが勝手に消えないのはすごくありがたい。

 それじゃ、ウェザーシーイングで。


 念じると同時に、掲げた手のひらから赤色の光が放たれる。


「赤きた! 激熱!」


『Aランクスキル、(シースルー:透視能力とうしのうりょく)、を会得しました』


 お、おお、おおおおお!


「Aランクキタコレ! しかも透視とかめちゃめちゃ使えそうじゃん!」


 やべぇ。やべぇぞこれ。だって、透視って、透視ってことはよ……


のぞき放題じゃないか……」


 恐ろしすぎて、手が震えてきた。

 俺は今、人知を超えたスキルを手にしてしまったのだ。


 コツコツと足音が聞こえる。

 イケメン騎士の足音だろう。


「ーーー?」


 今日もまた、なんだかよくわからない異世界語で話しかけられる。

 初日のような威圧感のある声ではない。

 ていうか、声色からして昨日からなんか愚痴を聞かされてる気がする。

 イケメン騎士は鉄格子の隙間から今日もサンドイッチをくれる。

 毎日サンドイッチがだ、味は異なる。

 今日のはレタスとタマゴサラダがたっぷり入ったエッグサンドだ。


「サンキュー」


 騎士は鉄格子の向こう側に体育座りをすると、サンドイッチを頬張る俺を見ながら話しだす。

 なんだか、仕事から帰った独身OLがハムスターに話しかけてるような雰囲気だ。

 なよなよするなよ気持ち悪い。


 あ、そうだ。せっかく透視能力を会得したことだし、このイケメン騎士でも透視してみるか。

 へっへっへっへ。どうせ下半身はお粗末様おそまつさまなんだろう?


(シースルー)


 念じながらイケメン騎士の下半身を注視する。

 少しずつズボンが透けて、パンツが見えてくる……っておいおい、ブリーフ様かよ。

 ブリーフは小学生までだぜ?

 しかもこんな、ピンクのブリーフとはよ。

 かわいいがらまで入っちゃってよぅ……


「ぶふーーーー!」


「うわっ!ーーー!」


 思わずサンドイッチを盛大せいだいに吹いてしまった。

 ていうかお前、それ、それさ!

 パンツじゃなくて、パンティーじゃねぇか!

 もしかして、もしかしてさ……

 こいつ……女なのか……?


 なんだか、『もー』みたいなこと良いながら顔に着いたタマゴサンドを拭っている。そんな姿が、何故だか妙に色っぽく見えてしまう。

 仕方がない、上半身も見てみよう。

 確認のため、確認のためだ。

 スキルの確認をするために見るのであって、嫌らしい気持ちはない。うん。


 イケメン騎士の胸を注視する。

 革の胸当てが透けて、上着が透けて……

 ブラジャー……だよな、これ。

 おっぱいを包み込むための、ピンク色の布……

 着用しているパンティーと同じ柄だし……


 ままままま、まてまて! まて!

 結論を出すにはまだ早い!

 検証を、検証をせねば。

 主観を捨てて、常識を捨てて、今ある現状のみから可能性を考えよう。


 可能性は以下のパターンが考えられる。

1、目の前のイケメン騎士は本当は女なので、女性用の下着を着用している。

2、目の前のイケメン騎士は男だが、女性用の下着を着用している。


 俺の常識では、ここで可能性がストップする。

 しかし、ここは異世界だ。常識など通用しないかもしれない。

 そこで、以下の可能性が発生する。


3、この世界の人間は、男女に関わらず女性用と思われる下着を着用している。


 俺はこの世の常識を知るためにも、様々な可能性から選択肢を絞るためにも、このイケメン騎士のパンティーの奥を、透視しなければならない。

 決して、決して嫌らしい気持ちがあるわけではない。

 この世界の常識を知るために、パンティーの向こう側へとたどり着く必要があるのだ。


「それでは、いざ……」


(シースルー)


 ズボンが透けて、パンティーにたどり着く。

 さらに注視を続けて……


『warning!! warning!! warning!! warning!! warning!! warning!! warning!! warning!! warning!!』


「ぐわああぁぁぁ! 目がああああぁぁぁぁー!」


 目が! 目が痛い!

 なんだ!? なんなんだ!?

 パンティーの向こう側に行こうとすると、視界にワーニングのメッセージが大量に発生すると同時に目に激痛が走るんだけど!


「ーーー!?」


 転がり回る俺にイケメン騎士が何事かと話しかけてくる。

 あぁ、パンティーの向こう側に行こうとした俺にも優しくしてくれるのか……良いやつだ……


 しかし、これでは検証が出来ない。

 パンティーの向こう側におちんさまが存在するのか否かは不明のままだ。

なるほど、これが……


「シュレーディンガーのパンティーか……」


 何故ワーニングになったのかは分からないが、今後このスキルについても検証していく必要がありそうだ。

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