第4話 俺に近づくと火傷するぜ?
俺の両手から紫色の光が放たれる。
「紫色! これはレアの予感!」
『Bランクスキル、(スキルホルダー(小))、を会得しました。
現在の保有スキル。
・スキルホルダー(小)
・-
・-
・-』
「ぬぐ、う……うぐぐぐぐ」
悪くない。悪くない。悪くないんだけど、もっとこう、空を飛べるとか、瞬間移動とかさぁ……
いやいやいや、冷静に考えよう。
そしてスキルについて
今まではガチャを引くたびにスキルが更新されていた。
つまり、俺のスキル
現に火種を起こす能力はなくなっちゃってるし。
しかし、スキルホルダーの能力を得ることで、毎回上書きされることはなくなった。
少なくとも、スキルホルダーを除いて3つの枠ができたわけだ。
もし今回、瞬間移動とか、めっちゃすごいスキルを手に入れていた場合、次のガチャで上書きされてしまうことになる。
スキル枠が1つしかなかったことを考えると、早い段階でこのスキルホルダーというスキルを会得できたのはめちゃくちゃラッキーだったのでは?
しかもスキルホルダー『(小)』とある。つまり、中、大も存在する可能性が高い。
Bランクで(小)なのだから、Aランクで(中)、Sランクで(大)ってところかな。
もしかしたらSSランクなんてものは存在しないのかもしれないが、あったらおそらく(特大)だろう。
何はともあれ
「うん。悪くない。
なんといってもBランクなのである。
DとCを飛ばしてのBランク。これは
寝て起きたら、またガチャが引けるわけだし。
「さっさと寝て、明日のガチャに
とりあえず明日から3日間はスキルが上書きされることはない。
問題は4日目にスキルがどうなるかだ。
玉突き形式でスキルが消えるのか、それとも上書きするスキルを選べるのか。
それとも全く違う結果になるのか。
あぁ、明日からのガチャが楽しみだ。
ポツリ、ポツリ。
頬に落ちる
「……ん? 濡れてる……って、雨!?」
大雨ではないが、ポツポツと絶え間なく降ってくる。
「ああああ! 焚き火が!」
焚き火はもののみごとに鎮火しておりましたとさ。
「タイミング悪ぅ!」
昨日の夜に火種を起こす能力を上書きしてしまったって言うのにさぁ!
なんでこんなにタイミング悪いのぉ!?
あーもぅ。仕方ねぇ。切り替えて今日のガチャするか。
「んーーーー! ほぉい! ガチャぁーー!」
掲げた手から白い光が放たれる。
うーん、Fランクスキルかぁ。
まぁ昨日Bランクだったから仕方ないか。
『Fランクスキル、(スパーク:火花を放つスキル)、を会得しました。
現在の保有スキル
・スキルホルダー(小)
・スパーク
・ー
・ー』
「……スパーク」
パチパチッ!
「なるほど」
うん。マッチの下位互換的なスキルだね。
まぁ、何回かやれば火は起こせそうだけど。うーん、微妙。
だけど、焚き火が消えてしまった今、火属性のスキルはありがたいな。
火属性なんてたいそうなものじゃないけど。
「まぁとりあえず歩きますか」
何も見つからなかったら雨宿りできるところを探そう。
歩くこと体感時間で三時間ほど。
「お? おお!?」
森が開けて、道を発見!
道と言っても
しかし、これで人間が存在することはほぼ確定だ!
川と平行するように道は伸びていて、遠くにうっすら見えるのは……
「城壁?」
うん、たぶん城壁だ。そこそこ大きな街があると思って良さそうだ。
あー、ようやく人間に会えるよ。
下手したら
うーん、森と違って遠くに目的地が見えてる分、歩くのだるいなぁ。
遠すぎじゃん? あんなの。
一時間ほどダラダラと歩いていると、馬の足音が聞こえてきた。
顔をあげると、こちらに駆け寄ってくる馬の影が二つ。
そしてその背には
「人間だ! おーい! おーい!」
手を振りながら
片方の騎士は中性的で整った顔をしており髪は銀髪のオールバック。
もう一人はゴツい顔でめんどくさそうな表情だ。
「ーーー! ーーー?」
「はい?」
イケメンの騎士が何やら話しかけて来るが、異世界語なのか全くわからない。
日本語でおk
「いやー、気がついたら森の中にいて、もうどうしたらいいか分からなくてですね。とりあえず街まで乗せてもらえません?」
「ーーー? ーーー?」
「はっはっは。何をいってるかさっぱりですなー」
「ーーー。ーーー?」
「オゥーイエスイエース。オッパイボインボイーン。ジーカップダイスキー」
「……」
イケメン騎士はゴリラ騎士に困ったように話しかけるが、ゴリラはめんどくさそうに何かを言うだけだ。
うん、何となくわかるよ。
てめぇが見つけたんだからてめぇが面倒見ろや、的な感じだよね?
イケメン騎士は困り顔のまま馬から降りると、少しだけ
俺に近づくと火傷するぜ? めっちゃ小さい火傷だけど。
「ーーー?」
「オナカペコペーコカラダベタベータ。メシフロネルプリーズプリーズ」
「……」
騎士は困惑しながら俺の手をとる。
なんだ、
握手は世界共通だけど、異世界でも通用するのね。
カシャン。
「カシャン?」
はい。
騎士は手枷が
あれ? 俺だけ歩けってこと?
「あのー? もう足が棒の様なんですけど」
話しかけてみるが、グイッとロープを引かれるだけだ。
手枷が食い込んで痛いのでやめてくれません?
そのまま引かれて歩く。
歩く。
疲れた。
「あのさー。そっちは馬だからいいけど、こっちは徒歩なんだよ? 少しは気を使ってくれてもいいんじゃない?」
「……」
イケメンはチラッとこちらを見るが、すぐに前を向く。
ゴリラは
と、道の横にソリのような板が落ちているのが見えた。
「へい! へい! ボーイ! プリーズアミニッツ!」
ちょっと強い声で話しかけると止まってくれた。
板を拾って、引っ掛かりそうな所にロープを引っ掛ける。そして俺は板に寝そべって。
「オーケー、ヒィアウィゴー」
「……はぁ」
あ、ため息ついた。ため息は異世界でも共通なのね。
「ーー!」
イケメンは何やら叫んで、
ピシン!
ヒヒヒヒーーン!
馬が
駆け出す馬、ピンと張られるロープ。
繋がってる俺と俺のソリは……
「うおおおぉぉ! はやいー! はやいって! こわい!」
こんな心もとない板でそんなスピード出すなよ! 体感速度50キロくらいあるぞ!
「ガッハッハッハ! ーーー! ーーー!」
ゴリラは大笑いして着いてくる。
わろてる場合か!
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