第368話 経験的に分かっている?

 「経験的に分かっている」と主張することは、ナンセンスではないだろうか。


 こういう主張をする人の「経験」には、未来の経験も含まれているのだろうか、と疑問に思う。過去のことは分かるが、未来のことは分からないというのは、我々の共通認識のはずなのだが、あたかもこれから起こることを知っているかのような説明の仕方である。


 「経験的に分かっている」というのは、過去の統計的なデータから推測して、こうなると予想される、ということが言いたいのだろう。けれど、過去の統計的なデータが、未来にも適用できる保証はどこにもない。それは、今述べた通り、単なる予想でしかない。グラフが一度凹んで、それから再び山なりになりかけているからといって、そのあとまた上り続けるとは限らない。そう予想することはできるが、唐突にまた凹むかもしれないし、あるいは、別の関数的に変動するかもしれない。


 やはり、未来のことは分からない。が、自分としては、別に分からなくて良いと思う。未来のことを知れるのは、喜ばしいことではない。その日の天気に一喜一憂する方が、人間らしくて面白いと思う(一喜一憂すること自体は面白くないかもしれない)。

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