第314話 ないもの・ことがある?
英語には”nothing”という単語があるが、これは凄い単語だと思う。
”nothing”とは、そのことやものがないことを表す単語である。たとえば、”There is nothing to do.”という文を和訳すると、「やるべきことは何もない。」となる。日本語の文では、〈やるべきこと〉が〈ない〉というふうに表されているので、(我々としては当然なのだが)特に違和感を覚えることはない。しかしながら、英語の文の場合、”nothing”は〈何もないこと〉を表す単語だから、〈何もないこと〉が〈ある〉というふうに表されていることになる。言ってみれば、日本語の場合と逆の作りになっているわけで、我々日本人からしてみれば、なんとも捻くれた文だと思えてしまう。
あるものがないという状況は、現実の中でも成立する。「さっきまでここにあった本が、今はない」という状況は、ものの在り方としていたって自然である。一方で、ないものがあるという状況は、現実の中では成立しえない。「ここにない本(ないという状態を帯びた本が)、今ある」という状況は、ものの在り方としては不自然である。
”nothing”という単語は、数学で登場する負の数のように、マイナスの性質を帯びているといえそうである。
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