第246話 〜な人間なんです

 「私は〜な人間なんです」という言い方があるが、よくよく考えると不思議な言い方だと思う。


 「私は駄目な人間なんです」とか、「私はスマートフォンを使わない人間なんです」のように言うわけだが、こうした内容では、わざわざ最後に「人間」を付けなくても意味は通じるはずである。前者なら「私は駄目です」で良いし、後者なら「私はスマートフォンは使いません」で良い。当然、聞き手も話し手が人間であることは知っているだろうし、わざわざ付け加える必要があるかというと、微妙なところである。


 個人的な意見だが、最後に「人間」を付けることで、その性質を帯びているのが自分の特異性によるのではなく、あくまで人間の一つのタイプなのだということを表現しようとしている感じが伝わってくるように思える。「スマートフォンを使わない」というのは、自分一人だけの特別な性質ではなく、あくまで「スマートフォンを使わない人間の集合の一部であること」というニュアンスを伝えようとしているということである。


 「人間」ではなく、これを「人」にすると、少し違和感を覚えるようになる。「私は駄目な人なんです」となるが、なぜか変な感じがする(のは、やはり、自分だけか)。

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