第242話 意味を求める意味

 意味のないことを考えるのは、意味があることを考えるよりも難しい。人間は話したり書いたりするが、どちらの場合も、まず言いたいことがあるのが前提である。言いたいことが何もないのに、ただ文字を連ねて文を構成することは困難を極める。


 要するに文の意味を予め考えているということだが、人間はこの「意味」というものにかなり支配されているように感じる。文章を読む際には、無意識であろうと意味を理解しようと思って読んでいるし、それは書く場合も同じである。さらにいえば、自分が生まれてきた意味や、勉強する意味など、何かと意味を求める傾向がある。反対に、意味がないと言われれば不安になるし、ないと分かっていても形だけでも自分で意味を作ろうとする。


 意味を求めることの意味は何だろうか。そもそもの話として、意味とは何だろうか。こんなふうに問いを持つことに何か意味があるのだろうか。


 考えれば考えるほど分からなくなるので、考えなければ良いという結論に至りそうだが、少なくとも、考えることに意味がないとはいえない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る