　書店に行くと、自己啓発本の部類なのか、名言集みたいなものがあるが、これのよくないところは、矛盾する内容が書かれているところだと友人が言っていたのを聞いて、なるほどと思った。

　たとえば、（あくまで思いつきで考えた例だが）「負けても次がある」と、「この一戦にすべてをかける」という名言（？）があったとすると、前者と後者は、それほど高いレベルではないにせよ、互いに反対の方向を向いている、つまり矛盾しているように感じられる。スポーツの試合か何かで、「負けても次がある」と考えて戦うのと、「この一戦にすべてをかける」と考えて望むのでは、本人の態度は明らかに異なる。

　こんなふうに、名言集の類には必ずといって良いほど矛盾する（相反する）内容が含まれているわけだが、それは、その本一冊で一つの主張と考えているからで、一つ一つの名言を適用できる場面が異なるものと考えれば、多少は理解の支障が少なくなる。以上の例でいうと、「負けても次がある」という名言は、すでに負けた人に対して適用でき、「この一戦にすべてをかける」という名言は、これから戦う人に対して適用できると考えるわけである。

　しかし、条件つきの名言というのも、如何なものか。