第138話 似ているようで異なる単語

 突然だが、appleとリンゴはイコールではない(appleはイコールと言い換えても良いとか、リンゴの正体はイコールだとか、そういう意味ではない)。もしappleとリンゴがイコールなら、「I like リンゴ」と言ったり書いたりしても通じるはずである。


 英単語を覚えるときに、英単語と日本語をイコールの関係だと考えて、それらを同じ意味として覚えようとするのが定石だが、本当はそういうやり方はあまり良いとはいえない(といっても、ほかに適した覚え方はないのだが)。この世界には、同様の事物を指す言葉が多数存在するが、それらはあくまで同様なのであり、まったく同じ対象を指しているわけではない。


 母語以外の言語を学習する際には、本来ならその言語の背景事情も同時に学習する必要がある。「apple」が示す範囲と、「リンゴ」が示す範囲は、記号としても、またその記号が持ち合わせる意味としても、まったく同じではない。appleとリンゴを同じ場面で使えない以上、それらが示す意味も自ずと異なってくる。

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