第86話 やりたいこと

 何をしようかな、と考えているときには、すでに何をしたいか決まっている場合が多い。それでも考えてしまうのは、今やりたいと思っていること以上に楽しいことがないか、と考えているためで、言い換えれば、本当はそれをやりたいのではないからである。


 本当にやりたいことなら、そんなことは考えずに、すぐに行動に移しているはずである。学校から帰ってきたら、手も洗わずにゲームを始める子どもは、その典型例だろう。それくらいの熱意を持つのが、何をするにしても重要だと思う。しかし、熱意は持とうと思って持てるものではない。


 一つのことをやっているのに、もう一つのことが気になる、という場合もある。今本を読んでいるのに、ゲームをやりたくなって、そしてゲームをやり始めると、今度は映画を観たくなる。それは恵まれている証拠かもしれないが、人間は同時に二つ以上のことはできないので、我慢して一つのことをやるしかない。やりたいことをやっているのに、我慢している意識があるというのが、少々おかしいところではある。


 やりたいことが何もないというのは、問題である。

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