第74話 本当といえるものはあるか

 自分は地球の住民だが、地球が本当に存在するのか、疑わしくなることがある。遠くから地球を観察したことがあるわけではないし、むしろそんなものが存在すると信じられる方がおかしいかもしれない。月も太陽も、そして宇宙さえも、誰かがでっち上げた幻想でしかない可能性もないとはいえないだろう。


 自分で確認したわけではないのに、そういうものが存在すると思えることは、しかし意外と多い。その代表例が報道というもので、自分で実際にその事件を目の当たりにしたわけではないのに、なぜかそれが本当に起きたことだと思い込んでしまう。報道とは、普通なら自分では知り得ないことを知らせてくれる非常に便利なものだが、裏を返せば、自分が知り得ないことなら、誰かに捏造されていても気づかない可能性があるものでもある。メリットがあるものには、それと同等のデメリットも含まれている、ということである。


 こういうことを考え始めると、やがて自分という人間が存在するかどうかさえ怪しく感じられるようになる。鏡の前に立てば自分の姿を確認することはできるが、それは、自分の目が作り出した幻想かもしれない。人間の目は、容易に錯覚を引き起こすことを忘れてはならない。

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