第73話 子どもは愛の証?

 子どもは二人の愛情の証として生まれるわけではない。もちろん、二人が愛し合った結果として子どもが生まれることはあるが、二人が愛し合うことと、子どもが生まれることの間には、直接的な関係はない。子どもが欲しいと思うのは、もっと根源的で生物的な欲求がはたらいたせいであり、愛が生じるよりも前にその欲求は生じる。


 自分の子どもだからとか、自分と血が繋がっているからといった理由で愛情を注ぐと主張する人がいるが、それは、そういう理由づけをしないと誰も愛せないことの裏返しではないか、と個人的には思う。これは少々言いすぎな感じもするが、でも、最終的にはそう表現するしかないだろう。自分の子どもだろうが、そうでなかろうが、誰かを愛することは可能である。たしかに、「自分の子どもだから愛する」と言っているだけで、「自分の子どもではない場合」については述べていないわけだから、その場合については何ともいえないが、こういう理由づけをする人は、「自分の子どもだから」という部分を強調したがる傾向が高いことは確かである。


 子どもが生まれるのは、二つの遺伝子が融合したからであり、そこに愛があるか否かという話ではない。

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