第43話 無駄は無駄ではない

 無駄を完全になくすことはできない。なくそうとすると失敗する。


 たとえば、自分の一日の行動を振り返ってみよう。そうすると、以下に無駄な行動をしているかが分かる。自分の意思でそうしていなくても、周囲の環境に無駄な行動を誘発されている、ということも多々ある。自分の人生は有限、つまり制限時間が設けられているわけだから、そうした無駄をなんとかしてなくしたい、と考えるのは自然なことだが、それを完全に成すことは不可能である。


 自動車を運転しているとき、信号でいちいち止まらなくてはならない、というのも言ってみれば一種の無駄である。自分の人生は有限なのに、どうして他人のために止まらなくてはならないのか? ほかにも、ご飯を食べるとき、なぜ何回も箸を動かして白米を口に運ばなくてはならないのか? しかしながら、それらを問題点として捉え、解消しようとすると、却って無駄が増えることがほとんどである。それは、それらの無駄は本当の意味での無駄ではなく、無駄を最小限に解消した結果残った小さな無駄だから、というのが一つの答えになると思う。


 人間の行動は、そのほとんどがすでに簡略化されている。

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