第25話 どうと訊かれても……
子どもが、「楽しかった」や「面白かった」など、単純な感想しか返せないのは、子どもの能力が低いからではなく、大人の質問の仕方が悪いからである。
こういう感想が返ってくるのは、大抵の場合、大人が「どうだった?」と質問したときだが、「どうか」と訊かれてまともな返事ができる人間がいるだろうか、と私は思う。何かを食べていると、「美味しい?」と訊いてくる人がいるが、不味ければ食べ続けるはずがないのだから、美味しいに決まっているだろう(これは多少無理矢理な理論だが)。
「どうか」という質問には、相手の回答を制限する力がある。つまり、質問する側は、自分が望む返事を貰いたくて、そんな馬鹿げた質問をしている、と思われる。承認欲求というか、そういう類の感情を満たしたいのだろう。それは、生き物としては理に適った行いだが、生き物として当たり前のことを、感情という人間に特有(だと思われている)な領域に持ち込むのは如何なものか。
「どうか」と訊くのではなく、少なくとも「どうしてか」と訊いた方がましである。前者と後者ではたったの二文字しか違わないが、「どうして楽しかったの?」とか、「どうして面白かったの?」と尋ねる方が、まだ生産的というものだろう。
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