第20話 スマートにスマートフォンを使う人

 誰かがスマートフォンを使っているのを見ると、嫌悪感を抱く人がいる。一方で、誰かが文庫本を読んでいるを見ると、嫌悪感を抱く人というのは、あまりいない(統計的に確かめたわけではなく、あくまで個人的な見解)。


 スマートフォンを使って本を読むのと、文庫本を読むのとでは、やっていることは同じである。つまり、主体が得る情報に変わりはない。しかし、スマートフォンを使って本を読んでいる人を別の誰かが見ても、それは「スマートフォンを使っている」としか認識されない。そうすると、その客体は、スマートフォンを使って何をしているのだろう、と考える。その結果として、様々な候補が上がるが、ゲームをしたり、メッセージのやり取りをしている人が、スマートフォンを使っている人の全体に占める割合が多い、ということを経験的に知っているから(あるいは、そういうふうに思い込んでいるから)、自然と、あの人は、スマートフォンを使って本を読んでいる、という可能性を排除してしまう。したがって、これらの行動すべてが、「スマートフォンを弄っている」という簡単な表現にまとめられてしまう。


 スマートフォンを、スマートに使っている人もいる、ということを留意しておくことが大切である。

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