第19話 生きたい?

 死にたくないと思うことはあっても、生きたいと思うことはない。これは、もともと自分が生きているからだと思われる。明日も自分が生きていることを前提に考えているから、生きている状態から外れたくない、つまり、死にたくないと思うようになる。


 苦しまないで死ねるのなら、死にたくないとは思わないかもしれない。死にたくないというのは、言ってみれば、苦しみたくないということだから、それでは、苦しまないで死ねるのなら、死んでも構わないのですね、と尋ねることも一応可能である(論理的におかしいが)。人間は必ず死ぬから、どのように死ぬか、ということが最終的に問題になってくるが、きっと、多くの人間が、寿命が尽きて安らかに死ぬことを望むだろう。それは、すなわち、苦しまないで死にたい、ということである。


 さて、そうなると、ここで新たな問題が発生するが、それは、生きているとはどういうことか、という問題である。明確に定義できないのは自明だが、自分は確かに生きていると感じるし、自分以外の人間も生きているように見える。したがって、そこには何らかの要素あるということになるが、それが何であるのかは分からない。


 面白い映画には、これだ、と思える何かがある、と言われることがある。何かとは何か。

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