ジュジュ—ラムネに反射して君は泣いていた
「振られたんだ」
僕は近くの店で買ったラムネを飲みながら、なんとなく反射越しに君を見てみると、普段の君とは全く違う表情が見えてしまって。
それでいてそんな言葉さ。
「そうなんだ」
「うん。そうなの」
「で、これからどうするの」
僕は別に気にしないつもりでいよう。
たいした興味もなさそうに、君には申し訳ないけれど、適当そうな返事をしてみる。
「別に。よくよく考えればあいつのことそんなに好きじゃなかったような気もするし」
嘘だ。強がりだ。
君のことは多分、君以上とは言わずとも、少なくともそのあいつとやらよりは知っているから。
分かるのさ、言わないけどね。
「それよりもう少し気にならないの? 私があいつとどんなやりとりをしたとか。流石に無関心すぎない?」
「別に。僕にとってはどうでもいい」
そうさ。
どうでもいいんだ。
君があいつを好きなこと、それが変わらなきゃ君があいつと付き合おうがなかろうが。
「ふん。相変わらず冷たいやつ」
「ごめんよ」
「すぐ謝ればいいって思ってるでしょ」
「その節はある」
「もうっ」
ラムネを飲み切って。中でビー玉が転がって。それで少し君の声は震えていて。
あー。なんて世界は退屈なんだろう。
どうして僕は今日もこんな寂しいんだろう。
「じゃあね」
「あっ、ちょっと!」
停めてた自転車に跨り、彼女が引き留めるのを無視してすぐに漕ぎ出す。
それでいてすぐに曲がり角を見つけ次第曲がった。少し遠回りだけどわざわざ曲がるんだ。
彼女の呟きが一瞬聞こえた。
「なんだよ、今日ちょっと変だよ。まあそれは私も同じか」
でも僕は振り返りはしない。
そして風向きを心配して曲がったところで、君の声はもう届かなくなった。
結局ラムネが反射したのか涙が反射したのかは分からない。
でも僕はすぐにでも曲がりたくて曲がり角を見つけた。
なぜって?
理由は簡単。
彼女の頬に水が当たって僕の気持ちがバレないように。
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