Miles -short story collection-

またたび

決意

Miles

 ハイウェイドライブ。

 窓を半分より少し、いつもより少し開けて、風を思い切り入れる。

 そして流れるのはポップなミュージック。

 高揚感が小さな戸惑いを隠していく。


「君は何してるかな」


 君を思い出し懐かしくて言ったのが5割。

 とにかく何か呟きたくて言ったのが5割。


「久しぶりに電話でもしてみようか」


 口だけで実際するつもりがないのが5割。

 やっぱり些細でも君と喋りたいのが5割。


「まあそれも。このドライブがひとまず終わってからだな」


 勇気がなくて先延ばしにしたいのが5割。

 単純にこの瞬間に浸っていたいのが5割。


 それにしても思うのは、この星は廻ってるんだということ。高速に流れてく映像の中、何層ものビルが、人が、想いが、この世界を形成してきたんだ。そして僕はそこを走るただのドライバー、でも、夢を求めるために走ってるドライバーなのさ……なんてカッコつけてみたりして。


 今日はあまりにも晴天。

 まさにドライブ日和。だからこそ素直に泣けないし、素直に向き合えない。

 雨が降っていたのなら、また違ったかもしれないのに。景色がいくら悪くても、隣で喋る君さえいれば楽しい休日だったかもしれないのに……。


「でもまぁ」


 たった一人でも。

 この青い空の下、風に合わせて進むのも心地いい気がして。

 悲しいけど心が吹っ切れた感じ。

 荷物が軽くなった感じ。


「ありがとう、楽しかったよ」


 本当に素晴らしい日々だった。

 でも、君も僕も、自分の夢に向かってそれぞれの新しい道に進むから。進まなきゃ。だから。


「さよなら、バイバイ」


 あぁ。

 寂しいけどなんか最高な風、気持ちいい。

 あぁ。


 君との日々に想いを馳せ佇む未練が5割。

 今の新しい一歩に未来を感じる僕が5割。

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